- 戸田:
- 有川さん、今日もよろしくお願いいたします。
- 有川:
- こちらこそよろしくお願いします。
- 戸田:
- 今日はどんなお話ですか。
- 有川:
- 新聞にこんな文章がありました。写真家の齋藤陽道さんの言葉です。「なんにもない日、おめでとう」。素晴らしい言葉だと思いました。
最近、悲しく辛いことがありまして。「なんにもない日、おめでとう」、いい言葉だなあと思いました。 - 戸田:
- そうですねえ。
- 有川:
- もうひとつ、新聞で大島雄作という人の「風5月吉野弘と旅に出る」という俳句がありました。吉野弘の詩集を持って旅に出るということですね。
- 戸田:
- はい。
- 有川:
- こまかいことはなにもかも言っていないのに、旅支度している作者の様子が見えるような気がします。
吉野弘は、みなさんご存知の『祝婚歌』、よく結婚式の祝辞でつかわれることが多いと思います。 - 戸田:
- ええ、そうですね。
- 有川:
- 「二人が睦まじくいるためには愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだとうそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかがふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい」まだ続きますが、これ、とてもいいですね。
- 戸田:
- ええ、いいですね。
- 有川:
- そこで、こうなると出番は吉野弘さんからおおなり修司さんにバトンタッチということになるのではないでしょうか(笑)。
- 戸田:
- (笑)。
- 有川:
- 福山が生んだ有力な絵本作家だと、僕は思っています。
- 戸田:
- 本当に。
- 有川:
- この間、おおなりさんが『コンドルは飛んどる』『かもね』『シカものがたり』という3作ものプランを持ってきてくださったんです。
- 戸田:
- おもしろそう!
- 有川:
- ええ、どれもおもしろいんです。最初に『シカものがたり』を読んでくださったんですが、それがあまりにも可笑しくて、うれしくなりました。この瞬間が編集者の醍醐味です(笑)。
- 戸田:
- (笑)。
- 有川:
- 『シカものがたり』は飯野和好さんに、『かもね』は高畠純さんに絵をお願いすることになりました。
だから「風5月おおなり修司と旅に出る」というのは、いかがでしょうか。 - 戸田:
- いいですねえ。
- 有川:
- 5月と言えば
「ふらんすへ行きたしと思えども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背廣をきて
気ままなる旅にいでてみん
汽車が山道をゆくとき
みずいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに」萩原朔太郎の詩です。
- 戸田:
- はい。
- 有川:
- この「五月の朝のしののめ」、そして「みずいろの窓によりかかりて」。これがなんとも心に沁みます。
読み手がいろんな窓を、また窓の外にひろがる景色を想像できるのではないでしょうか。 - 戸田:
- そうですね、旅に出たくなりますね。
- 有川:
- そんな感じがします。
- 戸田:
- 本当ですね。
- 有川:
- みなさん、毎晩寝る前に「なんにもない日、おめでとう」という気持ちを持ってベッドに入れるといいですね。
親友が亡くなってしまったものですから、身にしみて感じています。 - 戸田:
- そうでしたか。とても心に沁みるお話でした。そしておおなりさんの新刊がまた楽しみになりました。
- 有川:
- ええ、僕も楽しみにしているんです。
- 戸田:
- 今日もありがとうございました。
- 有川:
- ありがとうございました。
- 戸田:
- 絵本館代表の有川裕俊さんでした。
有川さんがご紹介くださった福山出身の絵本作家、おおなり修司さん。子どもたちに大人気です。『だるまなんだ』で絵本デビューされてから21冊も楽しい絵本が出ているんですよ。おおなりさんは俳優やナレーターとしてもご活躍です。またブックアンソロジーにも出ていただきますので、楽しみに待っていてくださいね。
おおなりさんの『福助はみた』は、第12回ようちえん絵本大賞を受賞しています。最新刊の『ふんがふんが』は、子どもたちの想像力を育む絵本として大好評です。有川さんも「こんな絵本を待っていた」と大絶賛しています。次回作もとっても楽しみです。
(2023.04.11 放送)
おおなり修司
1959年 広島県生まれ俳優、ナレーター、絵本作家
だるまなんだ
おおなり修司・文/丸山誠司・絵 だれにも言ってはいけない爆笑のラスト。
福助はみた
おおなり修司・文/きむらよしお・絵 福助はそのとき何をみたのか?!
ふんがふんが
おおなり修司・文/丸山誠司・絵「ふんが」の3文字のみで語られるゴリラパパの奮闘記。