第33回「行き当たりばったり力のつけかた」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

先月70歳になり、古希を迎えました。

戸田:

おめでとうございます。

有川:

周りは、そう言ってくださるんですが、本人としては「古らい希なり」と言われても何も実感はありません。歳をとって「おめでとう」と言われ、うれしくなくなって何年経つでしょう(笑)。
そこで、考えてみたんです。60歳以上の人に「あなたの人生を振り返ってみて、だいたい予定どおりにきましたか、それとも想定外でしたか」と聞いてみたい。

戸田:

そうですねえ、どうなんでしょう。

有川:

僕の場合は、全く予想もしなかった転回があって29歳で絵本館を始めて、思いもよらず40年間、つぶれずに今日までなんとかやってこれてラッキーでした(笑)。ささえてくださった方々へ、ただただ感謝です。
みなさんはどうなんでしょう。戸田さんはどうですか。
来し方想定内ですか、想定外ですか。

戸田:

そうですねえ、人生のいろんな場面でそれなりの選択をしてきたんですよね。あっちを選んだら、どうだったのかと(笑)。

有川:

そういうことですよね。考えてみればなにごとも思い通りにはいかないものだし、不本意な選択をしたにも関わらず後から考えてみれば結果オーライだったり。それに予定どおりの人生というのも、味気ないものがありますでしょう。

戸田:

そうですよね。

有川:

この番組を聴いてくださっている中学、高校、大学、そういう年頃のみなさんに言いたいのは、先のことを考えてもよくわからないから、行き当たりばったりもある程度やむなし、と考えたほうがいいように思います。

戸田:

そうかもしれませんね。

有川:

その「行き当たりばったり力」を付けるには、どうしたらよいか。
いつも言っていることですが、「IQより愛嬌」です。

戸田:

なるほど。

有川:

IQは努力によってなんとかなるものではないでしょう。ですからIQなど気にすることはありません。人生は、次どうなるかよくわからない。だから、咄嗟のときの瞬発力とか対応力が問われるのではないかと思います。その上、これがあったらすごいというものがあります。それは「人をみる目」ですね。IQや偏差値よりはるかに大事です。
息子が高校生の時に「グループで何かを調べて発表する」と言うんです。そこで、グループみんなで手分けして1人10軒、10人で100軒の家に行って、学歴、年収、持ち家かどうかのアンケートを、もちろん匿名でお願いする。すると、偏差値の高い大学に行かなくても、そこそこの生活が出来るということに、みんな気がつくよ、と。

戸田:

おかしい(笑)。

有川:

だから、ねじりハチマキでムキになって受験勉強なんかすることない、と(笑)。
それよりも楽しいこと、ワクワクすることをやっていると、知らず知らずのうちにいろんなことが身に付く。そういうことに期待をもったほうがいいじゃないか、と言ったんです。ただ勉強するなということではありませんよ。

戸田:

ええ。

有川:

『だるまなんだ』の作者、福山出身のおおなり修司さんも「行き当たりばったり」と言えば「行き当たりばったり」です。絵本の文・構成をやってみようと考え実行する。たいしたものです。絵本の文・構成のヒントになると思うので、その一部を披露しましょう。
おおなりさんは、文を書きますが絵は絵描きさんが描きます。そこで原稿に「表紙はだるまの絵」と書いてあるんです。「だるまさんがならんだ」のところには「だるまが並列している」と書いてあります。

戸田:

(笑)。

有川:

「だるまさんがころんだ」のページには、「だるまさんが押されてころぶ、またはころばされる」と。

戸田:

はい。

有川:

「だるまさんがにらんだ」では、だるまさんがにらみ合っている。「だるまさんがきけんだ」では、そこに犬が乱入し、だるまが崖から落ちそうになる。

戸田:

(笑)。


おおなり修司・文/丸山誠司・絵『だるまなんだ』

有川:

ところが、絵をお願いした丸山誠司さんは、全く違う絵を描いてきたんです。ひるがえって考えると、おおなりさんの文は、絵を描く人の想像力を刺激する力をもっているんですね。絵描きさんの瞬発力もそういう文があって、はじめてつちかわれていくのではないでしょうか。おおなり修司さんと丸山誠司さんの今風にいえば見事なコラボレーションです。

戸田:

ええ。

有川:

人間、人それぞれに多種多様の才能がある。ただかくれているのだと思います。自分の中に秘められている才能をみつけたら、人生が楽しくなるでしょう。そんなふうにみんなが思えたら、社会はもっと明るいものになるのではないかと思います。特に大人のみなさんが、子どもをそういう気持ちで見てほしいものです。

戸田:

本当にそうですねえ。
古希を迎えられた有川さん、これからも益々ご活躍ください。おめでとうございます。

有川:

ありがとうございます。

戸田:

来月もよろしくお願いいたします。

有川:

はい。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
(2018.12.11 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
だるまなんだ
おおなり修司・文/丸山誠司・絵 だれにも言ってはいけない爆笑のラスト。
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