第4回「趣味への道」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いします。

有川:

はい。よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

僕が絵本で役に立つだろうなと思っていることの一つが色彩感覚ですね。これはかなりあると思います。

戸田:

はい。

有川:

長さんでも、五味さんでも、村上春樹さんが高校生の頃から大好きだった佐々木マキさんでも、みなさんが独特の色彩感覚をお持ちなんです。

戸田:

そうですね。

有川:

それがないと有力な絵本作家にはなれない。色彩というものが相当大きな影響を作品に与えていると思います。
五味さんや長さん、佐々木マキさんや佐野洋子さんやいろんな人たちの、とても上品だけれど子どもの絵本だから力強い形や線だけでなく色彩。五味さんの色彩感覚の素晴らしさなどは他にはないですね。子どもの絵本で紫色を平気で使う作家はあまりいなかったんです。

戸田:

(笑)。

有川:

絵本には、見返しという部分があるんです。どの部分かというと表紙を開いて次のページ、その見開きの部分が見返しです。それを開くとトビラです。

戸田:

はい、そうですね。

有川:

最後のところ、裏表紙の手前の見開きページも見返しです。その見返しの色は、実はカバーを外していただくとよくわかるのですが、ちょっとずつですが絵本の絵のまわりを囲むようになっている。絵を壁に飾る時に額装しますよね。額とか、あるいは額の中のマットの役割を見返しが果たしているんです。

戸田:

では、とても大事な役割ですね。

有川:

ええ、それで絵が締まったり、広がったりしています。ことに五味さんの見返しの色の素晴らしさ。五味さんの絵本の見返しをみるだけでも感慨深い気持ちになります。

戸田:

そうでしょうね。

五味太郎「うみのむこうは」

 

有川:

この色彩的なバランスの良さ、この色彩感覚は後天的に身に付くのかどうなのかわからないのですが、何人かの絵本作家に「色彩感覚は後天的に獲得できますか」と聞いてみたところ、多くの人は「ちょっと無理かな」と言っていました。

戸田:

え、そうなんですか。

有川:

でも、何人かの人は「後天的なものもあるかもしれない」と言っていました。ただ先天的だと思っていても小さい時に無意識のうちに何らかの影響をうけている、ということはあるかもしれませんね。

戸田:

ありますね。だから子どもたちが出会う絵本というのは、子どもたちにとって初めての書籍の世界だから、より強いインパクトがあるのでしょうね。

有川:

そうだと思います。

戸田:

有川さん、そういったお話をお聞きしますと、やっぱり絵本って素晴らしいものですよね。

有川:

ええ。子どもたちが好きなもの、たのしいものを見つけだす最初のいいきっかけに絵本がなるといいなあと思います。すると、趣味というものが生まれてくる。子ども達が、いい趣味の人になってくれると社会全体が豊かなものになるんじゃないかなと思います。

戸田:

有川さん、今日もとっても興味深いお話でした。来月もよろしくお願いします。

有川:

はい、よろしくお願いします。
(2016.7.12 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
五味太郎の絵本「三題噺」
突然ですが、考えるとはどういうことだと思いますか。考えるとは具体的にどういうことかを知りたくないですか。そのことを考えていた時期がありました。
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