第86回「自分で補う」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそよろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

実は、すごい勢いで全国の本屋さんが次々と廃業しているんです。本が嫌いな人が増えてしまっているからでしょうか。

戸田:

ええ。

有川:

その原因の一つが読書感想文です。読書感想文に限らず、学校で感想文を書かせるのがいけません。本嫌いになる原因です。

戸田:

ええ。

有川:

あれをやって本好きになる子がいるわけがないと思います。いたらお目にかかりたいと、前から僕は言ってきました。

戸田:

そうですね。

有川:

たとえば、学校の先生たちが校長さんに「1ヶ月に1回、本を読んだ感想文を提出しなさい」と言われたら、先生たちも提出日の朝は気が重くなるでしょう。

戸田:

そうですよねえ。

有川:

論語のなかに「自分の欲せざることを人に施すことなかれ」と書いてあります。

戸田:

そうですか。

有川:

2600年も前から、自分がやらされたら嫌なことを平気で人にやらせるヤツがいた、ということです(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

2600年経っても、人間は変わらないんですね。気をつけなければいけませんね(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

学校へ行くと、子どもにとって「楽しくない」と思うことが増える。だから「学校に行きたくない」という子どもたちがでてきても不思議ではありません。
「いろんな子がいる」と、先生や大人が心の底から思っていればいいのですが、実際は口先だけ。こんな口先だけが前提になって教育をすすめているから、横並びを強調する重苦しい社会になっているのでしょう。
WBCで有名になった栗山監督が参考にした、昔、福岡にあったプロ野球西鉄ライオンズ三原監督のノートの中に「人間は十人十色だ。当然、野球の選手もそうだ。叱れば叱るほど発奮する選手もいる。反対に叱るとクシャンとなって駄目になってしまう選手もいる。そういう選手は上手に褒めなければいけない。それをどう見極めるかが監督やコーチの一番大事な仕事だ」とありました。
親や先生たちをはじめ多くの大人たちが、そんな思いで子どもに接してくれればと思います。

戸田:

ええ、本当にそう思いますね。

有川:

絵本館に『妖怪俳句』という絵本があります。

戸田:

はい。

有川:

俳句は石津ちひろさん、絵は妖怪シリーズの広瀬克也さん。

戸田:

とても楽しい絵本ですね。

有川:

その絵本をお子さんが楽しんでいる様子の動画を送ってくださった方がいるんです。2歳になったばかりの女の子が『妖怪俳句』が大好きで、俳句を暗記してしまうほど気に入ってくれています。本当に「人は十人十色」だと思います。生まれたそばからいろんな人がいるんですよ。「年齢に合った絵本」。この考えがどれほど見当違いか、よくわかる動画です。
新年の俳句で「おぞうには 覚悟をきめて いただくの」というのがあります。とても好きな句です。

戸田:

ええ(笑)。


石津ちひろ・俳句/広瀬克也・絵『妖怪俳句』

有川:

ろくろっくびが、お雑煮を食べているんです。そりゃ覚悟をきめないと食べられませんよね。ろくろっくびがお雑煮とは、よく考えたものです(笑)。

戸田:

ホントですよね(笑)。

有川:

子どもは、この俳句を読みながら「そうだよね、ろくろっくびなんだから、お雑煮を食べるときは注意しなければいけないよね。だいじょうぶかしら」と、自分でいろいろ補いながら読んでいる。

戸田:

ええ。

有川:

その「補っている」というのがいいと思います。
「ここが気に入っている」という自分の心のありようが、その子を元気づけているのではないでしょうか。その子の心を動かしている。

戸田:

自分で考えて想像するって、すごく楽しいことですものね。

有川:

そういうことだと思います。
『ふんがふんが』のように想像力を喚起させるような絵本には、省略が施されています。その省略されている間合いを子どもが自分で補う。その橋渡しをするところに「想像力」が生まれてくるのだと思います。

戸田:

そうですね。

有川:

こういう形の絵本は、今までとても少なかったので「おおなりさん、よろしくお願いします」と言う気持ちです(笑)。

戸田:

(笑)。次回作も本当に楽しみですね。

有川:

その次回作『シカものがたり』のラフを飯野和好さんが持ってきてくださって大笑いしました。

戸田:

(笑)。

有川:

ひと工夫ほどこされていて、とてもいいんですよ。『シカものがたり』は詩吟風絵本です。

戸田:

楽しみです!

有川:

やはり、ユーモアがあると想像する楽しみがふくらみますからね。

戸田:

ええ。

有川:

自分の心の中で「フフフ」なんて一人で笑っちゃうみたいなところが、読書にとっても生活にとっても大切なことなのではないかと思います。

戸田:

そう思います。私は、この月に一度の有川さんとのお話がとても楽しみですよ。

有川:

ありがとうございます(笑)。

戸田:

ユーモアもあって、想像力もかきたてられます。次回も楽しみにしております!

有川:

はい、どうぞよろしくお願いします。

戸田:

有川さん、今日もありがとうございました。
おおなり修司さんと飯野和好さんの『シカものがたり』も、とっても楽しみです。
(2023.06.13 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。
妖怪俳句
石津ちひろ・俳句/広瀬克也・絵おなじみ「妖怪シリーズ」の妖怪たちが、俳句で風流に挑戦!
シカものがたり
おおなり修司・文/飯野和好・絵詩吟風絵本の登場です!
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