第66回「外にあるもの」

戸田:

有川さん、よろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそ、よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

久しぶりにNHKの大河ドラマを観ました。渋沢栄一という人が気になったものですから。ところが、失礼な言い方をするようですが、なんだか厚みがないというか、薄っぺらな感じがしまして……。

戸田:

(笑)。

有川:

「なぜなんだろう」と思っていたら、俗に言うイケメンばかりが出てくるんですね(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

イケメンと言っていいのでしょうか。みなさん今風の似たような顔の人ばかりが出演していて、全体の印象がノッペリした感じになっているなあと思ったんですね。それでは、どんな顔がいいかというと、たとえばラグビーの日本代表の田中選手のような人とか。

戸田:

ああ、なるほど。

有川:

ジャガイモ系といいますか、僕は田中選手の笑顔が好きなんです。

戸田:

(笑)。

有川:

ああいう「いかにも日本人だぞ」というような人がいるとインプレッションというか、印象深くなりますね。イケメンばかりだと誰が誰なのか分からなくなる。そんな感想をもちました。『寺内貫太郎一家』の小林亜星さん、原作者の向田邦子さんもびっくりのすごいキャスティングです。とにかくキャスティングは重要だと思いました。

戸田:

そうですね。

有川:

実は、これは絵本にも言えることなんです。いかにも可愛い子ばかりが出てくると、薄っぺらな絵本になってしまう。起伏ができない、と言ったらいいのでしょうか。絵本では、どちらかというとみた目が可愛くない子を描く作家が多い。

戸田:

え?

有川:

かこさとしさん、長新太さん、五味太郎さんにしても、みなそうです。
お母さんたちが「うちの子もこんなに可愛らしかったらいいのに」と思うような可愛い子どもは描かない。

戸田:

どういうことでしょうか?

有川:

主人公が愛くるしくて可愛い、となるとストーリーに起伏を作るのが難しくなる。
たとえば絵本館の『おならうた』。原詩は、谷川俊太郎さんです。谷川さんの詩を読んで「この詩は絵本になる」と思いました。そこで、谷川さんのご了解を得て、飯野和好さんに絵を描いていただいた。谷川さんの詩を元に絵本が出来たわけです。谷川さんが全部の詩を書いたわけではないので、「原詩」という言い方をしています。

戸田:

なるほど。


谷川俊太郎・原詩/飯野和好・絵『おならうた』

有川:

飯野さんは、絵本にでてくる子どもの顔や大人の顔を、えも言われぬ可愛らしく、いかにも善人風には描かない。その意図はストーリーに幅や厚みを出すため。スタートで主人公の子どもを愛くるしく可愛く描いて、実は結果もとって気持ちいい立派な子どもでした、これではストーリーにならない。反対に同じく主人公が愛くるしく可愛い様子なのに、邪悪でとてもイヤな子でしたでは、これも話にならない。
ここに、絵本の面白さが隠されていると僕は思っています。

戸田:

なるほど。

有川:

ドラマのキャスティング同様、絵本の登場人物の描き方もとても大事です。

戸田:

そうですね、どんなものにも「キャラ」というのはとても大事ですね。
絵本の中にも人気のキャラがいたり……。何か惹き付けるものがありますよね。

有川:

ええ。「可愛い」というのは、「おやまあ、この子は可愛いなあ」とおもう、こちら受け手、読者の心の動きのことです。そのために始めの印象は可愛くないほうがやりやすい。
マリー・ホール・エッツさんの『わたしとあそんで』は主人公が表紙に大きく描かれています。主人公の女の子は奇麗とか可愛いとはほど遠い気がします。ところが、読み進んでいくと「ああ、この子は可愛いなあ」と。そんな印象を読者のほうが持つ。そんな力を絵本は持っているんですね。「可愛い」ということはこういうことをいうんだと思う。そういった読者の心の動きを期待している。心憎いですね。

戸田:

本当にそうですね。

有川:

読み手が絵本に描かれている文や絵の外にあるものを思う。そんな絵本を出版できたら、いいなと思っています。

戸田:

絵本館さんには、たくさんあると思いますよ。

有川:

ありがとうございます(笑)。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんでした。

絵本館の絵本にも、愛されキャラがたくさんいます。
たとえば福山出身の絵本作家、おおなり修司さんの作品ですと第12回ようちえん絵本大賞受賞の『福助はみた』の福助さん。ラップ絵本のDJ YOYO、おおなりさんのデビュー作『だるまなんだ』のだるまさんも、なんとも気になるキャラです。
そして、おおなり修司さんが10月26日にご出演くださる予定です。新刊『ことりのおまじない』のお話など、いろいろおうかがいしようと思っています。
どうぞお楽しみに!
(2021.10.12 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
おならうた
谷川俊太郎・原詩/飯野和好・絵想像力をかきたてるそれぞれの状況設定に大爆笑!!
福助はみた
おおなり修司・文/きむらよしお・絵福助はそのとき何をみたのか?!
だるまなんだ
おおなり修司・文/丸山誠司・絵だれにも言ってはいけない爆笑のラスト。
ことりのおまじない
おおなり修司・文/丸山誠司・絵「こ」をとる ことりのおまじない
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