- 戸田:
- 有川さん、よろしくお願いいたします。
- 有川:
- こちらこそ、よろしくお願いします。
- 戸田:
- 今日はどんなお話ですか。
- 有川:
- 実は、昨年の8月からこの1年ずっと湿疹に悩まされておりまして…。
- 戸田:
- それは辛いですね。
- 有川:
- 「かゆい」というのは、痛さとも違って特別ですね。
- 戸田:
- 我慢できないですよね。
- 有川:
- また僕がダメなものですから、掻きむしったりしてしまう。その瞬間だけはある種の快感なんですが、その後がいけません。しっぺ返しがすごい。
- 戸田:
- そうですねえ。原因は何でしょう。アレルギーとか。
- 有川:
- それがよくわからないんです。だけど、原因が焼酎でもなく、ウイスキーでもないということがわかり、胸をなでおろしました(笑)。そして、家で犬と一緒なのですが、犬が原因と言われることがなく、ほっとしています。
- 戸田:
- よかったですね(笑)。
- 有川:
- このことでつくづく思うことがありました。アトピー性皮膚炎で苦しんでいる若い友人に「大変だね」と言ってはいたんですが、この種の苦しみは実際になってみないとわかりませんね。
- 戸田:
- そうですね。
- 有川:
- 人生は、実際その目にあってみないとわからないことがほとんどですね。人間は他の人の苦しみ、悲しみや辛さを実のところ解することはできないのかもしれません。では、どうしたものなのか。せめて人の苦しみを分かったそぶりだけは慎まなければならないのではないでしょうか。そのためにも物事を客観的にみる力だけは身につける必要があるのではないか、と思います。
- 戸田:
- ええ。
- 有川:
- 谷川俊太郎さん文・長新太さん絵の『わたし』(福音館書店)という絵本があるんです。
「おいしゃさんからみると やまぐちみちこ5さい」
となっています。ところが、となりのおばさんからみると「となりのみっちゃん」なんです。 - 戸田:
- ええ(笑)。
- 有川:
- みる人、みる人で見方が変わる。いろいろ違って見えてくる。自分から見るだけではなく、他の人から自分を見る。その力が、客観的に自己をみつめるということではないかと思います。
- 戸田:
- なるほど。
- 有川:
- のら書店から出ている『ぼくからみると』という素晴らしい絵本があります。
文は核化学者の高木仁三郎さんです。高木さんは、残念なことに2000年に62歳の若さで亡くなられました。市民団体「原子力資料情報室」を設立し、代表を務められました。核化学者の立場から原子力の危険性に警鐘を鳴らし続けた方です。 - 戸田:
- そうなんですね。
- 有川:
- 片山健さんが絵を描いているんですが、この絵が素晴らしい。いろんな自分からみる。つまり、ものの見方が描かれている絵本です。
「ものごとを客観視する力」、これをぜひ、子どもたちにも感じてほしいし、身につけてもらいたいと思います。絵本は、そういったものの見方を獲得するためには持って来いのメディアではないか、と思っています。 - 戸田:
- そうですね。
- 有川:
- なんだか、かゆい話から最後はエラそうな話になってしまいました(笑)。
- 戸田:
- かゆいところに手が届くお話でした!
- 有川:
- なんと上手なことを!(笑)。
- 戸田:
- (笑)。
- 有川:
- 「一番最初に読んだ絵本はなんですか」という質問に、谷川俊太郎さんは「父の書斎にあった百科事典」と答えています。その百科事典に付いている絵と文を見比べて「なるほど」とか「へえ〜」と思うことが、とても絵本的だった、と。ただ絵を見るだけでなく絵を読んでいたんですね。だから「自分にとって最初の絵本は百科事典」だと。
- 戸田:
- なるほど。
- 有川:
- これは、言い得て妙だと思いました。
谷川さんは、子どもの時に図鑑や百科事典の絵を見ながら自分なりの世界を広げていった。そう思うと絵本の可能性に、こちらまで何だかうれしくなってきます。 - 戸田:
- 本当にそうですね。
有川さん、今日もとっても楽しいお話でした。
それにしても、かゆみが少しでも治まるといいですね。お大事になさってください。 - 有川:
- ありがとうございます。
- 戸田:
- こちらこそありがとうございました。絵本館代表の有川裕俊さんでした。
有川さん初めてのご出演が2016年4月でしたから、もう5年になります。月に一度、楽しいお話をしてくださっていますが、その内容が絵本館HPの「編集長の直球コラム」で連載されていて、私も懐かしく読ませていただいています。- そして絵本館から新刊情報をひとつ。
福山出身の絵本作家おおなり修司さんの最新刊『ことりのおまじない』が好評発売中です。 - そして絵本館から新刊情報をひとつ。
人気コンビによるおまじないシリーズ第二弾です。
お二人からのメッセージをご紹介させていただきます。
実は、『たぬきのおまじない』の続編を考えていたのですが、なかなか思いつかなくてボーッと庭の椿をながめていると、ミジロや名前も知らない小鳥たちがやってきて椿の花に顔をつっこんで蜜を吸っていました。その時、うん?ことり?そうだ!「こ」とりだ!っていう感じで、ことりのおまじないのおはなしを考え始めたんです。
満開だった椿の花もすっかり落ちてしまい、小鳥たちもいなくなりましたが、『ことりのおまじない』という作品が残りました。
丸山さんのキラキラとかわいい絵とともに楽しんでもらえたら嬉しいです!
おおなり修司
たぬきが「た」をぬくおまじないを、ぽんっとかけたかと思ったら、なんと今度は、ことりが「こ」をとるおまじない。
チュンチュン ピ チュン。
またまたゆかいなお話がおおなりさんの頭から生まれ
てきました。ありがとうございます!
今回、サメが出てくるページが自分ではとても気に入っています。
8種類のサメを描いたのですが、何ザメかわかるかなぁ〜?
チュンチュン ピ チュン。
あっ!「だいこくさん」がことりのおまじないで、「だいくさん」になっちゃった。
丸山誠司
- とっても楽しいです。ぜひお手にとってみてくださいね。
(2021.09.14 放送)
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ぼくからみると|本をさがす 絵本や児童書など、こどもの本を出版している「のら書店」の公式サイト。
ことりのおまじない
おおなり修司・文/丸山誠司・絵「こ」をとる ことりのおまじない
たぬきのおまじない
おおなり修司・文/丸山誠司・絵「た」をぬきゃ、たぬきの なかまいり