第64回「短所は仕方ない、治らないしね」

戸田:

絵本館は7月27日に43回目の創立記念日を迎えられたそうですね。1978年は24時間テレビの放送が始まった年なんです。「愛は地球を救う」。絵本館も愛のある出版社さんです。今日も有川さんのお話をお楽しみください。有川さん、よろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそ、よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

物忘れというのは、どうしてこんなに起こるのかなと思っているんです。

戸田:

私も知りたいですー!

有川:

歳と共にどんどんひどくなってきて、さっきも家内から「え、それも忘れているの」と言われたばかりです(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

先日新聞を読んでいたら、ニトリの会長、似鳥昭雄さんも物忘れがすごいそうです。似鳥さんいわく「忘れるだけでなく整理整頓もできなくて、机の上は書類だらけ。なくし物も多くて、身に付けるありとあらゆる物をなくします。カバンもなくしてきちゃうので、もうポケットに入れるしかないのだ」そうです。

戸田:

(笑)。

有川:

似鳥さん今77歳だそうです。新聞記事によると、小学校の時は、忘れるだけではなく注意力も散漫だった。先生の言ってることを1分も聞くことができない、理解できない、漢字も書けない。クラスでも馬鹿にされたり、いじめられたり。成績はいつもビリ。小学4年生になっても自分も名前を漢字で書けなかったそうです。

戸田:

そうなんですか。

有川:

3年くらい前に、自分が発達障害だということがわかったそうです。正真正銘の発達障害ADHD、注意欠如、多動性障害だと。でも、それがわかったので、ホッとしたそうです。

戸田:

そうでしょうね。

有川:

「自分は何が得意なのか、いろいろなことをやって見つけることです。人間、一つくらい何かこれはいけそうだというものがあるはずです。それを早く見つけることです。長所をみつけると短所が隠れちゃうからね」と言っています。

戸田:

いい言葉ですね。

有川:

似鳥さんはお見合いで接客上手な今の奥さんと結婚、するとニトリの売り上げがどんどん伸びたそうです。「家内は僕の第一の恩人だ」とのこと。そう言える似鳥さん、いい結婚をされたんですね。その奥さんが「あなたは誰でもやれるようなことはやれないで、誰もやれないことがやれる」と言ったそうです。

戸田:

まあ、すてきですね。

有川:

似鳥さんは、「好きなことは集中できるんですよ。大きな壁にぶつかると苦しいですけれど、打ち破るたびに成長したような気がしますよね。だから発達障害に生まれてよかったな」と思うそうです。そして「人の欠陥ばかりみて叱るのは最悪です。短所は仕方ない、治らないしね。親も、小さい頃から子どもの向いているものを探し出して“これ、やってみたら”と言ってあげることが大事です」と書いてありました。

戸田:

すばらしい見方ですね。

有川:

この記事を読んで「僕も発達障害なんだ」と合点がいきました。なにしろ整理整頓まるでだめ、忘れ物が多く、井上陽水の歌を口ずさみながら始終探し物をしている有様です。人生でどれほどの時間を探し物にさいてきたか。「なんだ、僕も発達障害だったのか、病気だったんだ」そう思うと、少し気が楽になりました。ただ惜しむらくは僕の発達障害のレベルが似鳥さんほどではなかったからでしょうか、「誰もやれないことがやれる」ところまではいっていないのが残念です(笑)。

戸田:

そうですか(笑)。

有川:

だから、大人はもうちょっと子どもや人を見る目が緩やかにできるようになればいいなとも思います。

戸田:

本当にそうですね。

有川:

緩やかといえば、五味太郎さんの『なんとなく』という絵本があります。

パン屋が 自転車をつくった
なんで?!
なんとなく
インタビューのひとが 道路をはいた
なんで?!
なんとなく
デパート帰りのひとが 表彰台にあがった 
なんで?!
なんとなく


五味太郎・作『なんとなく』

戸田:

(笑)。

有川:

そうやって、なんとなくやることも、あながち捨てたもんじゃないと思うんです。

戸田:

ええ。

有川:

なんとなくやってみたら自分に向いているものに出会えて、上手くいくとか。まあ、もちろん失敗もたくさんするでしょう。それも財産になることがよくあります。子どもたちが、いろんな事をやってみることのできる環境が整っていると、いいなと思います。
以前、五味さんが「学校に行くと、美術室には油絵や版画、シルクスクリーンなどの道具がある。また、音楽室にはヴァイオリンやギター、トランペット、ベース、ドラムスとかいろんな楽器が置いてある。“これ、ちょっとやってみたいな”と言うと、先生が手ほどきを少ししてくれる。その上、なにしろ校庭もプールも体育館もあるんだし、学校がそういう楽しい場所だったらいいよな」と言っていました。

戸田:

学校がそうなると、うれしいですよね。

有川:

絵本も主体は常に子どもです。親は「この子に向いている絵本はどれだろう」と考えるべきです。「名作絵本」などと絵本が中心になって、子どものことをないがしろにしてはいけません。名作絵本とは、その子が喜ぶ絵本、その絵本がその子にとっての名作なのです。主体は絵本ではなく、常に子どもです。

戸田:

その子にとっての名作絵本、言われてみればそうですね。

有川:

最初に五味さんの家に「こんにちは」と、僕が行った日
を絵本館の創立記念日にしようということで、1年遅れで創立記念日を決めました。43年なんとかやってきました。マラソンの有森さんではありませんが、自分をほめてやりたいと思います(笑)。

戸田:

ますますがんばってください!

有川:

わかりました。ゆっくりがんばります(笑)。

戸田:

有川さん、今日もありがとうございました。絵本館代表の有川裕俊さんでした。

妖怪俳句
石津ちひろ・俳句/広瀬克也・絵『妖怪俳句』

絵本館から新刊情報です。
広瀬克也さんの人気シリーズ、妖怪絵本の第9弾『妖怪俳句』。
あの妖怪たちが俳句で風流に挑戦しています。
え、俳句と妖怪、とんでもないコラボレーション?
ところが見事に響き合って、とびっきりの面白さ。
その数あわせて63句。たっぷり楽しめます。
広瀬克也さんのメッセージをご紹介させていただきます。

今回はちょっと趣を変えて、『妖怪俳句』です。
石津ちひろさんと一緒に作りました。
石津さんの俳句にはユーモアがあふれている。
妖怪だからこその楽しさ、とんでもなさ、ときには哀しさも詠まれています。
なかには意外な一面を詠んだ変化球もある。
それを“うーん、そうきたか”と頭をかかえて描くのもとても楽しかったです。
俳句でつづる一年間。妖怪たちものびのび楽しそうです。
ぜひ楽しんでください。

つづいて石津ちひろさんのメッセージもご紹介させていただきます。

「妖怪俳句えほんを作りませんか?」とのご提案をいただいた直後は、「なんて楽しそうなの!」とたちまち心が弾んだものでした。ところが、いざ作ってみようとすると、妖怪俳句がなかなか私の中から生まれ出てこないのです。
そこで、心のなかに妖怪を棲まわせるべく、広瀬克也さんの「妖怪シリーズ」をただひたすら読みふけっておりました。するとある日お昼寝中に、「ひまわりと くびのながさを くらべっこ」という「ろくろくび」のための俳句が心に浮かび上がってきたのです。
ひとつ浮かぶと、つぎつぎに他の俳句も湧き出てまいりまして、いまのような形になんとかこぎつけることができたのでした。
妖怪シリーズを読みながら気長に待ちつづけたのが良かったかなと、いまでは心から思っています。

(21.8.17 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
なんとなく
五味太郎・作なんとなく気分がよくなる絵本になりました。
妖怪俳句
おなじみ「妖怪シリーズ」の妖怪たちが、俳句で風流に挑戦!
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