第63回「ものの見せ方」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそ、よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

「行動変容」という本の書評を読んでいました。
「行動変容」と、言葉は大げさですが、要は行動を変えるということ。慣れ親しんだ日常の行為を変えるのは並大抵のことではありません。

戸田:

そうですよね。

有川:

そのためにどうしたらいいのか、というと「視覚に訴える」という話です。
たとえば、スナック菓子をどんどん食べ困っている人に、スナック菓子同量分の油を計量カップに入れて「一気に飲めますか」と聞くと、ほとんどの人が「できません」と言うそうです。

戸田:

ええ。

有川:

スナック菓子を一袋食べるということは、油を30g一気飲みしているのと同じことなんですよ、と。

戸田:

こわい!

有川:

こわいですよね。言葉で縷縷説明説得されるより、視覚的に現物を示されると、人間は初めてギョッとするわけです。

戸田:

そうですよね。

有川:

それは指導する側の方にもありえます。前回お話した『教えないスキル』の佐伯夕利子さん。有名なスペインのサッカーチームのコーチです。すごいと思ったのは、そのチームにはコーチが120人もいるそうです。

戸田:

そんなに!

有川:

子どもが3歳児からいるそうです。その120人のコーチたちが、マイクロフォンとビデオカメラを付けて、子どもたちに指導している様子を録音録画する。すると「今までの私たちは、なんだったのか」と恥ずかしくなってしまうそうです。

戸田:

なぜでしょう。

有川:

叱ってばかり、指示を出してばかり。子どもたちが自分で考えるように指導していなかったということが、よくわかるそうです。これを家や学校、会社でもやってみるといいのにと思いました。

戸田:

そうですね。

有川:

「ダメ出しばかりされる環境では、子どもたちは心のシャッターを下ろして何も言わなくなってしまう。そうではなく、何を言っても何をやっても、受け容れてくれるんだという安心感のある環境でこそ、選手たちは成長するのではないか」と書いてありました。

戸田:

そうですね、ノビノビできますものね。

有川:

子どもの自立性がどうやったら芽生え、強くなるかと考えると、「見える」ということが、子どもにも大人にもとても有効な手段ではないでしょうか。

戸田:

なるほど。

有川:

こういうものの見せ方が、実は絵本の最も得意とするところでもあります。ちょうど今、進めている『ことりのおまじない』という絵本があります。


おおなり修司・文/丸山誠司・絵『ことりのおまじない』

戸田:

おおなり修司さんですね。

有川:

ええ、「“こ”をとる、ことりのおまじない」です。前回は、「“た”をとる『たぬきのおまじない』」でしたが、今度は“こ”をとる。すると、また変なというか、違った世界が突然出現します。この種の突然は、絵本の独壇場でもあります(笑)。

戸田:

楽しみにしています!(笑)

有川:

こうした見せ方によって、新たな楽しみが生まれ出てくる。この新たな楽しみを享受するということは、人生にとって有益なことになっていくのではないかと思います。
40歳になろうとする息子が、小学生の時に「おかあさん、こんな些細な事でうれしくなるって幸せだね」と女房に言ったそうです(笑)。

戸田:

いいですねえ(笑)。

有川:

幸せの種は、見方次第ではそのへんにころがっているものではないでしょうか。

戸田:

そうなんですね。

有川:

生活のなかの些細な事を楽しめる、喜べる。そういう心の持ち様が、大げさかもしれませんが人生の幸、不幸を左右していくのではないかと思います。

戸田:

本当にそうですね。有川さん、今日もとってもいいお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。来月もよろしくお願いいたします。

有川:

はい。どうぞよろしく。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
有川さんのお話にも通じるような、とってもあたたかく楽しい絵本が絵本館から刊行されました。
ご紹介させていただきます。
古内ヨシさん作『なんだかたのしそう』です。


古内ヨシ・作『なんだかたのしそう』

だれかがわらえば だれかもわらう
わらえば なんだか たのしそう
たのしそうの連鎖で おもわず笑っちゃう
笑いがいっぱいつまった一冊です。

古内ヨシさんからのメッセージもご紹介させていただきます。

もしかして、ここは弱肉強食の世界?
こんな世界で動物たちがバカ笑い!
実は、とっても呑気なお話なんです。
始まりは、ライオンのオナラでした。
絵本館での出版はこれで3冊目になりますが、すべてオナラが出て来ます。
こんな匂いと笑いに包まれた絵本を作れて幸せです。

古内ヨシさんは、絵本館から現在3冊絵本を出されています。
『すごいサーカス』『オナラせんせい』、そして最新刊『なんだかたのしそう』。絵もとっても可愛いんですよ。
絵本館のHPでご覧になってくださいね。
(2021.7.13 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
ことりのおまじない
おおなり修司・文/丸山誠司・絵 「こ」をとる ことりのおまじない
たぬきのおまじない
おおなり修司・文/丸山誠司・絵 「た」をぬきゃ、たぬきの なかまいり
なんだかたのしそう
だれかが わらえば だれかも わらう わらえば なんだか たのしそう
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