- 戸田:
- 有川さん、よろしくお願いいたします。
- 有川:
- こちらこそよろしくお願いします。
- 戸田:
- 11月17日はお誕生日でしたね。いいお誕生日でしたか。
- 有川:
- いい誕生日でした。家の者はみんな忘れていましたが(笑)、会社の皆や仕事関係の人が祝ってくれました。
- 戸田:
- それはよかったですね。おめでとうございました。
- 有川:
- ありがとうございます。52歳で亡くなった母よりも僕は21年も余計に生きているものですから、そんなことを考えるとしみじみします。
- 戸田:
- そうですね。今、このコロナ禍の中で会いたい人になかなか会えなかったり、孤独をすごく感じている人が多いですよね。
- 有川:
- 多いでしょうね。ですから、早くコロナに対応できる薬が出来るようにと思います。
- 戸田:
- 本当にそうですね。
今日は、どんなお話ですか。 - 有川:
- 医者の立場とか、患者の立場とか、立場が違うと、いろいろ考え方や感じ方も違ってくるでしょう。
- 戸田:
- ええ。
- 有川:
- 絵本作家の人たちは他の出版社から出た絵本をどんなふうに見ているのかなと思うんです。「こういう方向性の絵本なら、自分だったら違う描き方をする」と考えるのではないか。ところが、われわれ出版の側は、「この作品が原稿の段階でうちに持ちこまれたら、どうするだろう」と考える。「この作品は、ぜひ出したい」と出版化に心が動くのか、「ちょっとこれは難しいですね」とお話せざるを得ないのか。作家とは全く違う見方をします。書店の人は「この絵本売れるかな」と考えているでしょう。
- 戸田:
- なるほど。
- 有川:
- お母さん、おばあちゃん、先生の立場だと「これは子どもに向いているかしら、向いていないかしら」というような見方をするかもしれません。
- 戸田:
- ええ。
- 有川:
- で、子どもはどう思っているかというと、「おもしろいなあ」「こういう絵本、好きだなあ」とか、そういった直裁的な心の動きで対応しているんだと思うんです。
- 戸田:
- ええ。
- 有川:
- では、そうした状況で出版の側としては何を考えるべきか。
「教える」というのは、主語が大人です。でも「学ぶ」の主語は子どもです。
子どもの側からすると、「“教えて”と頼んでもいないのに、どうしてこの人はしつこく教えたがるんだろう」という気持ちになる子もいるでしょう。 - 戸田:
- (笑)。
- 有川:
- ところが、ここに絵本の「活躍のしどころ」が隠されていると思うんです。子どもたちの「学びたい」という気持ちが、自然と湧いてくる余地を残しながら展開していく絵本。「教えてあげる」といった雰囲気をどこにも感じさせずに話をすすめていく。これが難しい。考える余地を残す、それこそが作家の腕の見せどころです。
- 戸田:
- なるほど、そうですね。本当に好きなものをみている時の子どもの目って、キラキラしていますからね。
- 有川:
- まったくその通りです。
そのキラキラした目をしているのが、最近のことで言えばノーベル物理学賞の真鍋淑郎さん。90歳にしてあの生き生きとした目の輝きは素晴らしい。それに大谷翔平選手ですね。 - 戸田:
- 本当にそうですね!野球を楽しんでいますね。
- 有川:
- そう、そういうことですね。野球を好きなのは、もちろんでしょうけれど、間違いなく楽しんでいる様子が身体から顔から発散している。実に魅力的に見えます。日本人に限らずアメリカの人たちも、あれでは「Shohei Shohei」と声援を送りたくなりますよね。ああいう人が話題になることは、子どもたちにとっても、すごくいいですね。その上、野球に興味のないおばさんたちまでみんなをニコニコさせる。あたりまえですが大谷選手は何かを伝えようなど、まったく考えていない。ただその様子、姿が見る人にある印象を残していく。伝えるということはこういうことだと痛感します。受け手が感じて、ある種の思いが涌き出てくる。何かが、結果伝わったことになる。
- 戸田:
- 本当ですね。
- 有川:
- みんながニコニコするような魅力的な絵本を作れると嬉しいです。
- 戸田:
- そうですね!
- 有川:
- 絵本で、教えることを目的にすると、子どもが何かを受けとり、そしてある種の思いが湧き出てくることが難しくなる。絵本も親切も「さりげなく」がいい。
- 戸田:
- なるほど、そうですね。
ところで有川さん、12月のご出演ですから今年最後となります。いっぱい楽しいお話をありがとうございました。 - 有川:
- こちらこそ、ありがとうございました。
- 戸田:
- また来年もよろしくお願いいたします。
- 有川:
- はい。
- 戸田:
- 楽しみにしています。ありがとうございました。
絵本館代表の有川裕俊さんでした。有川さん初めてのご出演が2016年4月でしたから、もう5年になります。月に一度、楽しいお話をしてくださっていますが、その内容が絵本館HPの「編集長の直球コラム」で連載されていて、私も懐かしく読ませていただいています。
ラジオ版「絵本の力」、最新記事は第67回「一番信用できる人」。有川さんのお話にありました『妖怪俳句』にハマっている可愛らしいお子さんの様子もお写真と共に紹介されていますから、ぜひご覧ください。思わず笑顔になります。絵本の力を感じます。
この広瀬克也さんの大人気シリーズ、妖怪絵本の人気ものたちがぬり絵になっています。絵本館HPからご自由
にダウンロードして遊んでください。そして、もう一つプレゼント情報です。あの大人気絵本、tupera tuperaの『パンダ銭湯』が発売から8年で50万部を突破していて今、抽選で100名様に特製ピンバッジプレゼントのキャンペーンが行われています。締切は来年の1月31日です。詳しくは、絵本館HPでみてくださいね。
(2021.12.14 放送)
第67回「一番信用できる人」
どうすれば子どもの好奇心が活発に動き出し、駆動しだすか。そこが教育にとって肝心要なところです。学校でも教科書だけでなく、雑学にも光をあててほしいものです。
妖怪俳句
石津ちひろ・俳句/広瀬克也・絵おなじみ「妖怪シリーズ」の妖怪たちが、俳句で風流に挑戦!
「パンダ銭湯」50万部突破!記念キャンペーン
絵本『パンダ銭湯』の50万部突破!記念キャンペーンに、たくさんのご応募ありがとうございました! 応募は締め切りました。 tupera tupera「パンダ銭湯」 発売より8年、おかげさまで50万部を突破しました! これを記念して「パンダ銭湯