- 戸田:
- 有川さん、よろしくお願いいたします。
- 有川:
- こちらこそよろしくお願いします。
- 戸田:
- 今日はどんなお話ですか。
- 有川:
- 今回ノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎さん。
驚きました。90歳であの身体の動かし方、話し方もしっかりしていらっしゃる。 - 戸田:
- そうですね。
- 有川:
- とてもお元気で、ゴルフも趣味だと書いてありました。人間は、歳をとればとるほど個人差が激しいものですね。
- 戸田:
- そうなんですね。
- 有川:
- 真鍋さんは、盛んに「好奇心、好奇心」とおっしゃっています。「今の日本の研究者は好奇心から発した研究が少ないのではないか。すべての学問の起点にあるのは好奇心だろう」と。
- 戸田:
- ええ。
- 有川:
- 好奇心ということで言えば、最近読んだ本の中に「子どもは教科書や参考書などよりも、雑学をたくさん得たほうがいい。頭が柔らかくなる」とありました。好奇心の結果が雑学です。
Aという雑学とSという雑学がインスパイアされて、「ああ、そういうことか」と新たなものがみえてくる。雑学という引き出しがたくさんあると、そうしたインスパイア現象が生まれてきやすくなるのではないかと思います。新規なことを考える力、企画力は、そのあたりに潜んでいるのだと思います。 - 戸田:
- なるほど、そうですねえ。
- 有川:
- 絵本業界の陥りやすい間違いの一つが「子どもに役立つ、ためになる」と考えるあまり、なにごとも子どもを基礎から一段一段教えていこうという教科書的な発想です。「愉しい」は、二の次のなってしまう。
- 戸田:
- ええ。
- 有川:
- どうすれば子どもの好奇心が活発に動き出し、駆動しだすか。そこが教育にとって肝心要なところです。学校でも教科書だけでなく、雑学にも光をあててほしいものです。日頃そんなことを考えているので、真鍋先生の話はとても腑に落ちるというか、うれしくなりました。
- 戸田:
- そうですね。
- 有川:
- 先日、北陸の放送局の方に3冊絵本をお送りしました。地元の新聞に絵本の書評を書いていらっしゃるのです。その方が、同僚で小さなお子さんがいらっしゃる二組の家族に、その絵本を貸してあげたそうです。
Sさんの家では年少のお子さんが『妖怪俳句』に、はまって即購入。保育園に行く時にも必ずかかえて出かけるそうです。(笑) - 戸田:
- 可笑しいですねえ!(笑)。
- 有川:
- 写真が添付されてきましたが、実に可愛いんです(笑)。先週からは熱心に妖怪の絵も描いているそうです。
- 一方、Yさんの家では、読んでもらった絵本3冊全部買ってほしいということで3冊とも購入。特に『たぬきのおまじない』が好きで、文章を暗記してしまったとのこと。「そのとき たぬきのおまじない」とつぶやきながら家の中を歩いているそうです(笑)。
- 戸田:
- いいですねえ!(笑)。
- 有川:
- 「やはり絵本館の絵本は、子どもたちの心をわしづかみですね」とありました。この「わしづかみ」というのが
なんともうれしい言葉です(笑)。
常日頃、子どもたちの好奇心が生まれるためには、楽しくなる、心がワクワクするというのが基本中の基本。そう思いながら絵本を出版しているものですから、こういうお知らせをいただくとウソでもうれしくなってしまいます。 - 戸田:
- 本当にうれしいですね。
- 有川:
- まずは、子どもが「おもしろい」と思わなければ始まりません。昔、テレビでニコニコしながら番組の最後に「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」と言っていた淀川長治さん。今思うと淀川さんは、ただただ映画が好きなだけではなく、純粋に映画を愉しんでいる人なんだと思います。絵本の世界にも、淀川さんのような人がいてくれるといいのですが。なにごとも愉しんでいる人が一番信用できます。
- 戸田:
- そうですね。
- 有川:
- 僕も絵本をもっと愉しめる人になりたいと思っています(笑)。
- 戸田:
- 今日もなんだかうれしい気持ちになりました。また次回もよろしくお願いいたします。
- 有川:
- こちらこそ。
- 戸田:
- ありがとうございました。絵本館代表の有川裕俊さんでした。
(2021.11.9 放送)
妖怪俳句
石津ちひろ・俳句/広瀬克也・絵おなじみ「妖怪シリーズ」の妖怪たちが、俳句で風流に挑戦!
たぬきのおまじない
おおなり修司・文/丸山誠司・絵「た」をぬきゃ、たぬきの なかまいり