第34回「意思決定力・自己肯定力・共感力」

戸田:

有川さん、今年もよろしくお願いいたします。

有川:

よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

この前、慶應義塾大学医学部小児科教授で日本小児科学会会長もされている高橋孝雄先生にお話をお聞きする機会がありました。

戸田:

ええ。

有川:

「子どもには、意思を決定する力・自己を肯定する力・他の人と共感する力が必要です。この三つがあれば鬼に金棒じゃないでしょうか」と、先生はおっしゃっていました。

戸田:

なるほど。

有川:

絵本と何が関係するかというと、まず意思を決定する力というところです。選択することがなければ意思は決定できません。反対に意思の決定に必要なものが選択です。ところが、学校でも家庭でもあまり選択はさせません。

戸田:

はい。

有川:

選択には失敗がつきもの。失敗を重ねることが成功の素になる。ところが成功がいいすぎなら、独創的な考えをもつ人間になるためには失敗をいやがることはありません。どんどん選択して自分の意思を決定していく、そんな習慣をもつのは重要です。
絵本のことで言えば、本屋さんに行って好きな本を買う、図書館で好きな本を借りる。それを子どもたちが自分で決める。すると「どうしてこんな本を買っちゃったのかな」とかいうこともあるでしょう。これも次の選択の糧になっています。逆に「今の気持ちにぴったりだ」と思うことがあれば、自分はえらいと「自己を肯定する力」にもなるでしょう。

戸田:

ええ。

有川:

夜寝る時にお子さんに絵本を読んであげるご家庭も多いでしょう。その時に「これ、読んで」と子どもが絵本を自分で選んで持ってくるのがいい。なにごとも子どもが自分で決めることは、とても大事です。

戸田:

そうですよね。

有川:

僕は、子どもが絵本を持ってきても「今日はなんだかその絵本を読む気がしないから、それはパス」と言うこともありました(笑)。

戸田:

そういう時もありますよね(笑)。

有川:

そうすると、子どものほうが「おとうさんは、この絵本なら読んでくれる」と考えて、僕の好きな絵本を持ってきたりするんです。僕が喜んで読むのを子どもたちはわかっていましたから。佐々木マキさんの『ピンクのぞうをしらないか』をもってくる。こじつけに聞こえるかもしれませんが、子どもにとっては「他の人と共感する力」にもなっていくでしょう。絵本は色々役立っています(笑)。

戸田:

(笑)。


佐々木マキ『ピンクのぞうをしらないか』

有川:

絶体絶命の場におよんでも「ピンクのぞうをしらないか」ですからね。ここがすきです。
そうやっていくうちに子どもたちも、だんだん自分の好みがみえてくる。自分が好きなことをみつけるスタートに絵本は役立つと思います。趣味をみつけることにもつながってくるのではないでしょうか。気持ちのいい趣味をもてるかどうか、人生にとって、大きなことです。

戸田:

そうですね。
有川さん、先ほど教えて下さった三つをもう一度教えてください。

有川:

意思を決定する力・自己を肯定する力・他の人と共感する力、この三つです。

戸田:

どれも大事ですねえ。

有川:

三つ揃っているというのは、なかなか難しいかもしれませんね。

戸田:

自己を肯定する力というのは、私達大人が「大丈
夫だよ」「がんばっているね」と声をかけてあげるのもいいのかなと思います。

有川:

高橋先生も、そうおっしゃっていました。
「ほめるということが大切です。出し惜しみなく、ほめなさい」と。

戸田:

やはり、そうですか。

有川:

「出し惜しみなくほめる」というのが、いい言葉だと思いました。

戸田:

本当にそうですね。

有川:

ほめ上手というのは、上手なあいづちと一対です。
3つめの「他の人と共感する力」にも上手なあいづちは関係します。相手の話を受けとって「なるほど」とか、「たしかに」「そうね」などと応ずれば、相手が話す意欲をダウンさせることはないでしょう。それは一種のほめ上手ということです。
それをいきなり、自分の考えをとうとうと述べると多くの場合、相手は不愉快になり話す意欲を失います。
その前に「なるほど」「たしかに」「そうね」と言って、その後に「でも、これはどう」といけば、お互いの話が「行ったり来たり」することになります。
まず「あなたの話はちゃんと聞いていますよ」というシグナルを送るのがとても大事です。これは話をしている相手に対する礼儀でもあります。会話は礼節からはじめるのがいい。
高橋先生は「 “そうだよね”“よかったね”から始まる会話、共感する力がとても大切です。子どもの頃に成功体験を積むと人間は強くなる。お母さんがほめ上手になれば、子どもは自然と自信をもつようになります」と、おっしゃっていました。ところが日本では、反対にけなすのがいいとされてきました。歴史的にもそれはいえます。「愚妻」とか「豚児や愚息」と、悪く言うのがよいとされてきた。子どもだけでなく周りの人を、なるべくほめて生活するのがいいのではないでしょうか。社会のためでもあります。

戸田:

そうですね。有川さん、年の始めにとってもいいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。いい年になりそうです。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
(2019.1.5 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載していきます。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
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