第26回「絶対を禁ずる」

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いします。もっと深く絵本の魅力にふれてください。有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

よろしくお願いします。

戸田:

この度、絵本館さんが作ってくださった番組オリジナルポストカードが想像以上に素晴らしくて!
高畠純さんのイラストがとってもいいですね。楽しくて。

有川:

ユーモラスだし、なにより色彩の素晴らしさがなんともいえません。

戸田:

ありがとうございます。

有川:

とんでもない。

レディオ BINGO「本の情報番組 ブック・アンソロジー」オリジナルポストカード
イラスト・高畠純
有川:

先週、高畠さんが絵本館にきて『なぞなぞはじまるよ2』のラフをみせてくださったんです。なぞなぞの文はおおなり修司さん、絵が高畠純さんです。それが、とてもおもしろい。『なぞなぞはじまるよ2』をみてつくづく思ったんですが、子どもが大人になるにしたがって何を身につけるといいのだろうかと。
「頭がいい」=「偏差値が高い」と思っている人がたくさんいる。でも、それより大切なのはトンチ力。それがないと生きていくのが大変になると思います。
明治以降、日本の指導者に欠けていたのがトンチ力ではないでしょうか。大事なのはとっさの知恵、機転がきくか否か。偏差値が高いが即頭がいいにはなりません。偏差値で頭の良し悪しが決まるなら、あんな戦争を始めたり放射能をたれ流したりしないでしょう。偏差値と知性は直結しません。それからもう一つ、人をみる目。

戸田:

大事ですね。

有川:

友だちにしても、結婚にしても、商売や仕事にしても、なんにしても「人」が関係するでしょう。人をみる目は、とても大事だと思います。

戸田:

そうですね。

有川:

それから、正義というのがありますが、これがクセモノです。

戸田:

ええ。

有川:

作家の石田衣良さんが、「戦争や争いごとは、すべて自分が正義であると思っている人が起こすのではないでしょうか」と書いていた。僕も正義というものが社会を滅ぼす原因になるような気がしているんです。
正義が薬味的に少しだけならいいんですが、「正義が絶対」となると、ずいぶん窮屈な人がたくさん社会にあふれることになってしまう。一緒に酒を飲みたくない人ばかりになる(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

では、正義という詐欺商法にひっかからないために、本とどうつきあえばよいか。
一つは、ストーリーの中から読者のあなたが思いついた理念、たとえば「こんなことは許せない」とか「これこそまちがいない」と思う考え、そこにいたる過程。その考え方に人間はがんじがらめになってしまう可能性がある。瞬間的にでも、なるべくそれから距離を置いて、ものごとをみる力を養う。つまり、「疑う力」を身につける必要がある。この力がつけば、オウムのような宗教にもオレオレ詐欺にもひっかかるようなことはないでしょう。
なぞなぞとか落語とか、ものごとを柔らかく考える力、つまり色んな角度からみる力が、生きていく上でとても役に立つのではないかと思います。

戸田:

本当にそうですね。

有川:

前回お話したtupera tuperaさんの『こわめっこしましょ』は4年ぶり。オリンピックみたいですね。そして、長谷川義史さんが『いいから いいから5』を描いてくださって6月に出来上がるんですが、これにいたっては、なんと8年ぶりです(笑)。
原稿を受け取って、「これは長生きするしか手がないな」と思いました(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

世の中には「絶対の正義」をふりかざしてくる人がいます。ところが、『いいから いいから』のおじいちゃんは、どんな状況にあっても「いいから いいから」と相手を認めて受け入れるんです。決めつけたりしない。距離をおくけど、やさしくあたたかい。我が身を振り返ると身にしみますね。
そこで、みなさんにオススメしたいことがあります。日常生活で「絶対」という言葉を使わないようにする。これはなかなか大変です。これが子どもの頭を単純化しないためには、とても有効です。
絶対というのは、「生きものは生まれたら必ず死ぬ」ということくらいしかないでしょう。情報がたくさん増えたことで人は柔軟に考えられるようになったかというと、逆になってしまったのではないでしょうか。多くのことを知ったためにかえって頭が固まってしまった。

戸田:

ええ。

有川:

ストーリーというものには麻薬的なところがある。読者はどうしても、そのストーリーの主人公の立場になって考えてしまう。すると主人公の立場から一方通行的にものをみる人になりがちです。
『走れメロス』のメロスからみるだけではなく、友人の立場、妹の立場、王様の立場からみると色々違ったものがみえてくる。
今朝もテレビで「孤独になると本来の自分がみえてくる」と言っている人がいましたが、「本来の自分」なんてあるんでしょうか。そんなことを思うから迷うことになってしまう。もともと「本来の自分」なんてないと思えば、生きていくのはオチャノコサイサイなのに(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

「本来の自分がある」などと思うと、ずいぶん息苦しい人生を送ることになってしまいます。

戸田:

考えすぎないほうがいいですね。直感で生きてもいいのかなと。

有川:

そう、時には直感が大切ですね。直感は、結構はずれない。そんな気がします。そういった力をみがいていけば、人付き合いも困らないんじゃないかな。ただ、その直感を人に押しつけてはいけません。

戸田:

有川さん、まだまだいろんなお話を聞かせていただくのが楽しみです。だんだん深くなってきましたね。
今日もありがとうございました。

有川:

ありがとうございました。

戸田:

またよろしくお願いいたします。
絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
絵本館から新刊が届きました。
先月有川さんがご紹介くださっていたtupera tuperaさんの『こわめっこしましょ』。表紙は、とても可愛い一つ目小僧さんなんですけど、ページをめくるとすごーくこわいです。

ねえねえ こわめっこしようよ!
ないたら まけだよ
いい? いくよ
“にらめっこ”じゃなくて“こわめっこ”??
“わらったらまけよ”ではなく
“ないたらまけよ”の逆転発想。
次々に登場するこわ〜い妖怪や魔女たちに、
まけるな!まけるな!

tupera tuperaさんからのメッセージもご紹介させていただきましょう。

季節の行事の中でも、特に力をいれている節分。
我が家では毎年本気で怖い鬼のお面を作り、全力で子供達を襲います。
その鬼のお面を、絵本館の有川さんが気に入ってくれていて、いつか絵本になればいいなと前から話していました。
そして、パンダ銭湯を作ってから4年。
そろそろ新作の絵本をと打ち合せをしていた時に、ハロウィンの絵本を作って欲しいという依頼がありました。
ある時、子供達とお風呂にはいっていたら、娘が「怖い顔でにらめっこしようよ」と言い、「それじゃ、“こわめっこ”だね」と言って、遊びました。
鬼、ハロウィン、その二つのテーマと、子供達といっしょに生み出した遊びが組み合わさって、1冊の絵本になりました。
どうぞ、みなさんもこの絵本をつかって、本気で対決して遊んでみてください。

tupera tuperaさんらしい、とても素敵なメッセージですね。絵本館からの新刊tupera tupera作『こわめっこしましょ』。これ、子どもたちの反応をすごくみてみたいです!ぜひ、お手にとってみてください。

(2018.5.8 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載していきます。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
なぞなぞはじまるよ 2
おおなり修司・なぞなぞ文/高畠純・絵 なぞなぞの面白さと、絵本の楽しさをまたまた合体。
いいからいいから5
いいからいいから5 ついに!やっと!今度こそ...8年ぶりの「いいからいいから」です!
こわめっこしましょ
tupera tupera・作 "にらめっこ"じゃなくて"こわめっこ"??
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