第20回「心地よい風がふく高畠純さんの絵本」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそ、よろしくお願いします。

戸田:

絵本館の絵本ガイド「絵本のちから」の中には、有川さんの思いがギュッと詰まっています。
私は「こんな絵本作家と出会いました」というページがとても興味深いです。有川さんが出会った作家さんは、最初は五味太郎さんで、その次が長新太さんですか。

有川:

長さんの前に高畠純さんのところに行きました。
だから、今日は高畠純さんの話をしようと思います。

戸田:

はい。

有川:

高畠さんと僕は同い年。お会いした時はお互い29歳でした。
本当に温厚な方で、国語辞書の「温厚」というページには、高畠さんの写真を貼りたいくらいです(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

息子さんの那生さんも、有名な絵本作家になられています。

戸田:

おおなり修司さんとのコラボもいいですよね。

有川:

『フワフワ』ですね。とてもすばらしい絵本です。省略と飛躍がたくさんあるので、子どもたちがいろいろ思い描いたり想像することができる、いい絵本です。

戸田:

そう思います。

有川:

高畠純さんにはお子さんが二人いらっしゃいます。お嬢さんは『飛ぶ教室』の編集者。お二人ともとても美形なんです。

戸田:

いいですね(笑)。

有川:

お二人が絵本館に遊びに来て下さったとき、「お父さんはどんなときに怒るの?」と聞いたんです。これは前々から聞いてみたかったことなんです。すると、二人は顔を見合わせてしばらく考えて、「ありませんね」と言うんです。
多くの子どもたちは、高畠純さんの子どもになりたいと思うのではないでしょうか。僕などすぐ怒ってしまうので穴があったら入りたいくらいです。

戸田:

(笑)。

有川:

29歳のとき、高畠さんに会いにお住まいの岐阜まで行きました。そして、その人柄そのままのあたたかくて気持ちのよい絵本『ピースランド』を描いていただきました。

ピースランド
高畠純『ピースランド』

昔、パスツールという人が「人間は生まれながらにしていびつだ」と言ったそうです。「生まれつき人間はいびつなんだ」と思えば、子育てにも人間関係にもそう悩まなくてもいいのではないでしょうか。僕も戸田さんも生まれながらにいびつ。いいですよね。
バロック音楽とか、バロック美術とか「バロック」という言葉があるでしょう。

戸田:

ええ。

有川:

「いびつな真珠」という意味だそうです。

戸田:

そうなんですね。

有川:

子どもたちは生まれながらにみんなバロック、いびつな真珠。ですから一人一人が違ってあたりまえということでしょう。そういう気持ちで子どもをみてあげる。そんな大人がいるかいないか、そこが問題です。
作風という言葉がありますが、高畠さんの絵本には、そんな心地よい風がたっぷりとそよいでいる気がします。

戸田:

そうですね。「絵本のちから」のなかに、有川さんと同い年の高畠さんの一文があります。

有川:

ええ。

戸田:

「絵本館は、ユーモアだけではなく作家のおもいが発揮できる作家性の高い出版社なんだよね」。有川さんは、この言葉がうれしくて忘れられないと。

有川:

そうです。
多くの大人たちは、作家のおもいが発揮されると、子どもたちが絵本の理解から遠ざかってしまうのではないか、と思いがちですがそうではない。なにしろ絵がついているから大丈夫。少しぐらい「分からない」が入ってちょうどいいぐらいです。
問題は感じるか、感じないか。感受性の豊かな子どもに育ってくれれば、イラストレーターの和田誠さんの言葉ではないですが「お楽しみはこれからだ」状態になると思います。

戸田:

(笑)。
有川さん、今日も興味深いお話をありがとうございました。また「こんな絵本作家に出会いました第3弾」、お願いいたします。

有川:

はい。

戸田:

今日もありがとうございました。絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
絵本館から、また楽しい絵本が発売されました。
木版画作家たけがみたえさんの『マンボウひまな日』。
マンボウひまな日、と聞いて何か思いうかびませんか。これは言葉遊びになっていて、「びんぼうひまなし」。
他にも「月にどっぽん」「ねこにごめん!」「サルも来たらおやつ」「まごにもコショウ」とか(笑)。それに合った木版画がとてもおもしろくて、私が今いちばん好きな絵本です。ラジオだから見ていただけないのが、とても残念です。
たけがみたえさんの『マンボウひまな日』、ぜひお近くの書店でお手にとってみてください。

(2017.11.14 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。


エフエムふくやま 戸田雅恵さん

ガイド「絵本のちから」
2018年に40周年を迎えた絵本館が、これまでにつくってきた絵本の制作秘話や楽しみかたなどをご紹介しています。
フワフワ
おおなり修司・文/高畠那生・絵フワフワと舞うダチョウの羽根。それが、すべての始まりだった!
ピースランド
高畠純・作のんびりするのって、とても大切です。
マンボウひまな日
たけがみたえ・作Mokuhanger(木版画作家)たけがみたえ、絵本作家デビュー作!
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