第11回「一見わけがわからない絵本」

戸田:

月に一度、もっと深く絵本の魅力にふれています。
有川さん、今日もよろしくお願いします。

有川:

こちらこそ、よろしくお願いします。

戸田:

今日はバレンタインデーですけれど、有川さんの目の前にはチョコレートの山があるのではないですか。

有川:

残念ながらありませんね(笑)。この前、ラジオを聴いていたら、ダイヤモンドユカイさんは若い時、トラック2台くらいチョコレートがきたと言っていました(笑)。

戸田:

すごいですねえ(笑)。

有川:

だから、今流行りの経済の新自由主義、グローバル化と同じですね。圧倒的に豊かでモテる人がいる一方、僕のように一生モテずに涙をのみながら日々送っている人もいるわけです(笑)。

戸田:

(笑)。今、男の人が自分のために「オレチョコ」というのを買うとか。

有川:

へえ、そうですか。

戸田:

それが時代の流れなのでしょうかね。
でも有川さん、どんなに時代が変わっても時を超えて愛されている絵本というのは普遍的ですよね。

有川:

ええ。小説などでは作家が亡くなると、全く読まれなくなってしまうことがよくありますが、絵本の場合は長く読まれるケースが多いですね。

戸田:

ええ。

有川:

絵本館もそろそろ40年ですが、初期の頃からずっとそのまま出している絵本が何冊もあります。

戸田:

絵本の金字塔ということでいえば、この度『ぶきゃぶきゃぶー』が絵本館から復刊されましたね。

有川:

そうなんです。この絵本は講談社から出ていたんですが、絶版になったと聞いて「まさか」と思ったんです。
そこで確かめてみたら、その通りだったんです。絵本館から復刊させてもらいました。こんなうれしいことはありません。
僕はこの絵本は「絵本のなかの絵本」だと思っていたものですから、どうして絶版なのかと。もちろん売れないからです。どうして売れないかというと、「なんの役にもたたないのではないか」と大人は思うからなんでしょう。
ところが「なんの役にもたちそうにないのに、なぜか子どもの心をつかむ絵本」というのがある。そのことに普通の大人は気がつかない。

戸田:

私は有川さんのお話をきいてから、この『ぶきゃぶきゃぶー』は、ぜったい子どもたちが好きだと思いました。言葉のテンポのよさ、なんともいえない楽しさ、絵もすごくおもしろいです。

有川:

こういう「一見わけがわからない」絵本に何があるかというと「因果関係から自由になれる」です。人間、子どものときはもともと因果関係に縛られていない。ところが大人になるにしたがって、なんでも因果関係で考えがちです。いくら考えても起こったことは仕方がない。
ある意味では笑うしかない。なんでも因果関係で追求しすぎるのは悪いクセ、というか生活が暗くなるでしょう。
この『ぶきゃぶきゃぶー』も含めて、読者の想像力をかきたてる絵本があります。「すこし混乱する」というか「これはなんなの?」つまり不完全な部分があるから想像する力は生まれてくる。
読む人が参加する余地が残っている絵本。参加するから読者の心は働きだすし、想像する力もついてくる。そんな絵本が子どもたちの心をつかんでいるのではないでしょうか。「一見わけがわからない」絵本は子どもだけでなく、大人にも有益なんですけどね。

戸田:

確かにそうですね。

有川:

世の中には意味がわからないことはたくさんあります。トランプさんなんか、まだ意味がわかりすぎるほどわかるほうだと思います。ただ、わかりやすくてもわかりにくくても、どうしようもないものはどうしようもありませんが(笑)。

戸田:

そうですね(笑)。
私も子育てをしている時は「絵本から何かを学んでほしい」というような気持ちで、推薦されている「いい絵本」とかをチェックしたりしていましたけれど、有川さんのお話をうかがう中で「絵本の楽しさ、魅力」がわかってきたんです。これからももっともっと素敵な絵本を、そして絵本のお話を教えていただけたらと思います。

有川:

はい、ぜひそんなことができたらうれしいです。よろしくお願いします。

戸田:

今日もありがとうございました。

有川:

ありがとうございました。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をうかがいしました。あの絵本の金字塔『ぶきゃぶきゃぶー』が絵本館から復刊しました。文は内田麟太郎さん、絵は竹内通雅さん。本当に楽しい絵本で、子どもたちが「これ、好き!」と言うのがよくわかります。お値段は1300円プラス税です。プレゼントにもいいと思います。ぜひチェックしてみてください。
(2017.2.14 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
ぶきゃぶきゃぶー
なにがなんだか分からないけどぶきゃ ぶきゃ ぶー ブタおじさんのバスは はしります
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