第10回「わからないけどおもしろい。わからないからおもしろい」

戸田:

有川さん、今日はよろしくお願いいたします。

有川:

どうぞよろしくお願いします。
22年前の今日、阪神・淡路大震災が起こりました。

戸田:

そうですね。

有川:

もう22年経つんですね。早いようにも思えますが、被災された方たちは、そうは思えないでしょうね。
僕は1948年に生まれたんですが、1923年に関東大震災があり、その後25年間、日本中あちこち大地震が続き1948年の福井地震が最後で、1995年まで落ち着いていたらしい
です。それで今、また大変動期に入っているそうです。

戸田:

今、地震が多いですよね。

有川:

だから、こんな土地に原子力発電は無理筋でしょう。

戸田:

私も同じことを思います。

有川:

ここで本題に入って絵本のことになりますが、よく「ユーモア・ナンセンス」と続けて言ったりしますけれど、僕はユーモアとナンセンスは、ちょっと質の違いがあると思っています。
ユーモアは、多くの人が「おもしろいね」と笑えますが、ナンセンスになると、なにがなんだかわからないと言う人が多い。

戸田:

怒っちゃう人もいたりして(笑)。

有川:

そう、そう(笑)。
先日新聞で、俳優の柄本明さんが「よくわからないけれどおもしろい」ということをおっしゃっていました。「考えてみるとよくわからない。でも、なぜだかおもしろい」ということが色々あります。ナンセンス絵本にも通じるところがありますね。好きか嫌いか、ということだと思います。その好きか嫌いかは、人生にとってとても大事です。
たとえば「よい絵本」という言い方がある。

戸田:

ありますね。

有川:

「よい絵本」というのは個人個人で決めればいいことで、誰かに「よい」と決めてもらうことではない。
強いて言えば他人に向って言うのであれば「わたしの好きな絵本」と言うべきでしょう。ところが、好き嫌いまで他人(ひと)に決めてもらうのがあたりまえだと思っている人が結構いる。好き嫌いぐらい自分で決めましょう。

戸田:

確かに。

有川:

そこで、今度こんなフェアをやろうと思っているんです。
「一見なんの役にもたちそうにないけれど、なぜか子どもの心をつかむ絵本フェア」。自分の子どもが何に夢中で、なにを気に入っているのか、親なら知りたいと思うのではないでしょうか。

戸田:

おもしろそう!

有川:

つまり、ナンセンス系の絵本のフェアなんですけれど、大人にはすこぶる評判がよくないと言ってもいいかな(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

ところが子どもはナンセンス絵本が大好きです。擬態語、擬声語などが出てくると大喜びします。擬態語、擬声語には持って生まれた根源的なものが何かあるのかな、と思います。他の言語と比べても日本語は擬態語、擬声語がものすごく多いそうです。
「ゴロゴロ」「ぶきゃぶきゃ」とか。
そうそう、『ぶきゃぶきゃぶー』という絵本があるんです。

戸田:

(笑)。

有川:

この絵本は講談社から出版されており、文は内田麟太郎さん、絵は竹内通雅さんです。僕は、大好きな絵本ベスト3に入るくらい気に入っていたんです。
ところが、この絵本が絶版になってしまった。絵本専門店の人から「有川さん、『ぶきゃぶきゃぶー』が絶版なんです。絵本館で出してもらえませんか」と言われました。彼が「僕としても、あちこちでこの絵本のおもしろさを話しているから、手に入らなくなってはとても困る」と。

戸田:

そうですよねえ。

有川:

そこで、内田麟太郎さん、竹内通雅さんに連絡をしたら、「ぜひ復刊してください」ということだったので、絵本館から復刊することになりました。今日発売です。

戸田:

とてもうれしいです。さっそく見せていただきますね。

有川:

何の役にも立ちそうにない実に気持ちのいい絵本です。
だから、多くの大人たちは「これはなんなんだ」と不安になるでしょうね(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

でも、この「よくわからないけれどおもしろい」というのは子どもにとってとても大事です。この気持ちがないと科学への道にはつながりません。科学のほうへ進む人たちは、「わからないから、おもしろい」あるいは「わからないけど、おもしろい」です。その思いがあるから学ぼうという気持ちがわいてくる。
科学に限らず、学問一般がそういうものだと思います。

戸田:

有川さん、またもっといろんなお話を聞かせてください。今年も楽しみにしています。

有川:

はい、よろしくお願いします。

戸田:

こちらこそよろしくお願いいたします。
絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
絵本の金字塔『ぶきゃぶきゃぶー』が絵本館から復刊されました。私もさっそく孫たちに贈ろうと思っています。
(2017.1.17 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。


エフエムふくやま 戸田雅恵さん

ぶきゃぶきゃぶー
なにがなんだか分からないけどぶきゃ ぶきゃ ぶー ブタおじさんのバスは はしります
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