- 戸田:
- 有川さん、今日もよろしくお願いいたします。
- 有川:
- こちらこそ、よろしくお願いします。
- 戸田:
- 今日はどんなお話ですか。
- 有川:
- 詩人でもあり、絵本の文も書かれる石津ちひろさんにインタビューする機会がありました。
石津さんは四国愛媛県の出身です。僕がちょうどその前に『夢千代日記』の早坂暁さんの本を読んでいまして、そこにお遍路さんの話がでていました。
お遍路さんの伝統というのは、弘法大師・空海の頃からなので千数百年の歴史があるそうです。八十八カ所ですね。 - 戸田:
- ええ。
- 有川:
- 驚いたんですが、昔はハンセン病の人を「お遍路さんに行け」と言って四国においやったそうです。なぜかというと、四国の方たちはそうした人たちに対してもちゃんと施しをなさっていたからだそうです。
早坂さんの家は51番札所の近くだったそうで、札所に患者の方たちが集まっていると、お母さんは行ってお金を手渡ししていたそうです。そういった四国の方の対応がすごいなと思います。何かを差し上げる、喜捨という言葉をあらためて考えました。 - 戸田:
- ほんとうですね。
- 有川:
- 早坂さんは、広島の原爆で妹さんを亡くされているんです。ですから『夢千代日記』なんですね。
- 戸田:
- ええ。
- 有川:
- 早坂さんは学生のころから渥美清さんとも仲が良かったそうで、二人でよく旅行しながら俳句を作ったりしていたそうです。
そして、石津さんも俳句の会が渥美さんと一緒だったそうです。石津さんから渥美さんのおもしろい話も伺いました。 - 戸田:
- ご縁ですねえ。
- 有川:
- 僕の父は99歳で亡くなりましたが、70歳から俳句を始め、倒れた95歳までの25年間で3000を超える句を作っていました。
- 戸田:
- 素晴らしいですね。
- 有川:
- 95歳まで、まったくボケずに暮らせたのは俳句のおかげだったと思います。
105歳で亡くなった義理の母は、高畠純さんのカレンダーが大好きで、毎月のカレンダーの絵を見て自分なりのお話を作っていました。 - 戸田:
- まあ、それはすてきですね。
- 有川:
- 僕の娘が小さい頃に、カレンダーから作ったお話をうれしそうに話していました。
- 戸田:
- それはいいですね。
- 有川:
- アメリカにエドワード・ホッパーという画家がいます。そのホッパーさんの絵を、横尾忠則さんが「まるで物語が生まれてくるような絵だ」と言っていました。高畠さんの絵も「物語が生まれる絵」なんですね。
- 戸田:
- そうですねえ。
- 有川:
- ですから義理の母も、高畠さんの一枚の絵からいろんなお話を考えて孫娘に話すことができたのでしょう。そんな義母でしたので、100歳を過ぎるまでボケることはありませんでした。
- 戸田:
- そういうお話をうかがうと、絵本の力って底知れないですね。
- 有川:
- 絵本の絵描きさんは、普通の絵画とは違って「話が生まれでてくるような絵が描ける」ことを求められているんです。
- 戸田:
- ホントですね。
- 有川:
- ちょっとふざけている、余白があるとか…。そういった絵だから、読者であるこちらが自分の想像力で余白をうめていくので、話が生まれてくるのかもしれません。
- 戸田:
- そうですね。
- 有川:
- そういった新しいながれの絵本作家が長新太さん、五味太郎さん、今お話していた高畠純さんなどです。絵描きといっても、いろんな種類の絵を描かれる人がいます。そして、石津ちひろさんの文章にも余白がたくさんあります。そこが、いろんな種類の絵本を生みだす力になっているのだと思います。
上手に余白をほどこされた絵や文章。それによって、読者の想像や空想がふくらんでいくのだと思います。 - 戸田:
- そんな脳みそを刺激するような絵本が、絵本館にはたくさんありますね。想像をたくましくするような絵本がたくさんありますから、ご覧いただくといいですね。
- 有川:
- ぜひ、お願いします。
- 戸田:
- 有川さん、今日もありがとうございました。
- 有川:
- こちらこそ。
- 戸田:
- 絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
有川さんのお話にもありました「ちょっと余白のある絵本」「想像力をかきたてられる絵本」が、また絵本館から出ました。
- 五味太郎さんの『とりあえずありがとう』。
とりあえずシリーズの第2弾です。
「ありがとう」という言葉ひとつに、こんなにも多様な「ありがとう」があり、もののみかたが広がる絵本です。
五味太郎さんからのメッセージをご紹介します。
少し理屈っぽく言うと「ありがとう」のもとは「有難い」ですから、有るのが難しい、そう簡単に起こる状況ではない、と言うわけですから、あまり気安く「ありがとう!ありがとう!」なんて使ってはいけない言葉なのですよ、と言うあたりのことを、ま、読んでお分かりいただけたら、とりあえず ありがとう!
と言うことです。よろしくお願いします。
そして、『とりあえずごめんなさい』という絵本も出ています。よろしく。
- 絵本館の新刊五味太郎さんの『とりあえずありがとう』、ぜひお手にとってみてください。
(2020.4.14 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
2021 高畠純オリジナルカレンダー
2021は花づくし!毎月季節の花がかわいらしいカレンダー。
とりあえずありがとう
ふつうに「ありがとう」ではなく「とりあえず ありがとう」