第46回「バカは死ななきゃ治らない?」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそ、よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

僕は今年72歳になるんですが、今まで感じなかったものが歳とともに魅力的に見えてくる。そんな経験をしました。
アメリカのトニー・ベネットという歌手がいるでしょう。以前は「この人のどこがいいんだろう」と思っていたんです。ところが、トニー・ベネットとレディ・ガガのデュエットを聴いて魅了されました。なんともおおらかで伸びやかな歌声、自然体で自分なりのリズム感がなんともいえません。それにレディ・ガガがいいんですね。この二人のデュオを企画した人はえらい。レディ・ガガを見直しました。それにしてもトニー・ベネット80代後半とは、おそれいります。

戸田:

そうですね。

有川:

多くの人が大人になるにしたがい、おもしろいことに出会ってもすごく嬉しそうにしない。恥ずかしいのかな。

戸田:

そうかもしれませんね。

有川:

そうやって段々、歳をともにニブくなっていくんですかね。人のことはえらそうにいえませんが、髪だけでなく好奇心までもが薄くなってしまうのでしょうか。僕なんかは子どもの時からずっと「これから一杯飲むぞ」という時は、今にいたるまで本当に嬉しさが続いていますがね(笑)。

戸田:

子どもの時から、って!(笑)。

有川:

幼稚園にあがる前くらいからかな(笑)。晩酌の時に僕を膝に乗せた祖父が、祖母がいなくなると「飲むか」と言って焼酎を飲ませてくれていた。そのうち小学校にあがる頃には一合くらい飲めるようになっていました(笑)。

戸田:

そんなこと言っていいんですか?ま、時効ですね(笑)。

有川:

そんなに悪いことをしたわけではないんですけれど、やっぱり時効ということにしますか(笑)。
表座敷にちゃぶ台を出して晩酌をするんです。夏の夕暮れ、庭の大きな棚に夕顔があって、祖父が「今度は、あれが咲くぞ」と言う。見ていると、うす暗い夕暮れの中でクルクルクルッと白い花がパッと咲くんです。その白と黒とのコントラストがなんとも幻想的でした。

戸田:

まあ!今、思い浮かべているんですけれど、素敵ですねえ。

有川:

美意識というのは、こうしたちょっとしたきっかけで育っていくのかもしれません。

戸田:

本当にそうですね。

有川:

小学校の先生になったばかりの叔父が、夕方竹やぶで休んでいる赤とんぼをたくさん採って袋にいれて家に持ち帰り、電灯の下で放す。パアッと飛びたったトンボの赤がなんとも印象的で、それも幻想的でした。あまりのことに、ただただ感嘆です。実にきれいなすばらしい光景でした。わすれられません。甥をよろこばせようという叔父の気持ちに感謝です。
子どもをよろこばせる、楽しませる。ともに教育も絵本もめざす方向は同じですね。

戸田:

そうでしょうね。

有川:

絵本でも「え、そんなことあり?」という驚きの筋書きを上手に考えることができる作家がいます。パンダが銭湯に行くとか、ぶたが木に実る、なんて思いつきませんから。

戸田:

そうですよねえ(笑)。

有川:

かみなりの親子が家にやってきても、おじいちゃんは驚きもしない。「いいからいいから。ちょっとお風呂でもどうですか」と、もてなすなんて思いつきません。
意表をつく思いがけない設定なのに絵があるおかげでしょうか、何の違和感もない。
「うん、そうだね」と思わせるところが絵本のおもしろい
ところなんでしょう。

戸田:

ええ、本当にそうですね。

有川:

『さる・るるる』は、五味太郎さんが「あいうえお」に“る”をつけると動詞になる、と気づいた。ある、いる、うる、える、おる…。まる、や、るるはダメですけれど、ほとんどが動詞になる。これはおもしろいと。
そこで「狂言回しになるのは、なにがいいだろう」と考えたのが「さる」。“さる さる”だけは、安直になるので使わなかったそうです。

戸田:

(笑)。


五味太郎『さる・るるる』

有川:

『さる・るるる』を読んだ小学生の女の子が『ぞう・ううう』『からす・らすらす』『たつ・つつつ』と、3つ考え絵本にした。担任の先生が職員室で先生たちに読んだら大爆笑。

戸田:

子どもたちにちゃんと届いている。すごいですねえ。

有川:

五味さんの絵本には、子どもの自発性を触発させるなにかがあるような気がします。子どもが「自分でも作ってみよう」「自分もやるぞ」というのが、なにより大切というか、いいですね。ですから、外国でもすごい数の絵本が出版されているわけです。

戸田:

そうですね!

有川:

本村亜美さん、高畠純さんお二人で回文の絵本を作ったんです。子どもたちは回文も大好きです。西日本新聞社に話したら子どもたちを集めてくださって、子どもたちの回文作りワークショップをお二人がやってくれました。おもしろい回文がたくさん出来ました。「さといもおもいとさ」とか、「あかるいこ、いるかあ?」とか、「わたし たわし わたしたわ」など、感心しました。絵もついています。2日にわたって新聞に掲載されました。
【きょうのテーマ】回文を作ろう 絵も付けよう(上) 本村亜美さんと高畠純さん講師に、こども記者が挑戦
●一人でできる言葉を探し続ける楽しさ皆さんは「回文」を知っていますか?上から読んでも下から読んでも同じになる文章のことです。回文を題材...●一人でできる言葉を探し続ける楽しさ皆さんは「回文」を知っていますか?上から読んでも下から読んでも同じになる文章のことです。回文を題材...
【きょうのテーマ】回文を作ろう 絵も付けよう(下)こども記者の作品
●響き合う言葉の力と絵の力回文をテーマにしたワークショップ(福岡市中央区の西日本新聞社で開催)で、こども記者が仕上げた作品を紹介します...●響き合う言葉の力と絵の力回文をテーマにしたワークショップ(福岡市中央区の西日本新聞社で開催)で、こども記者が仕上げた作品を紹介します...
戸田:

子どもは大人よりも頭がやわらかいですからね。

有川:

ええ。でも大人も遅くないですよ(笑)。

戸田:

そうですか(笑)。

有川:

70歳になっても80歳になっても遅くない、「バカは死ななきゃ治らない」はウソです。何歳でも遅くはない(笑)。

戸田:

(笑)。

有川さん、今日もありがとうございました。

有川:

こちらこそ、ありがとうございました。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
(2020.2.11 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
さる・るるる
五味太郎・作ぜんぶ「る」で終わることばでできています。
どっちからよんでも -にわとりとわに-
どこか力の抜けた回文と、味わい深い絵が合体して楽しい絵本になりました!
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