- 戸田:
- 有川さん、今日もよろしくお願いいたします。
- 有川:
- こちらこそ、よろしくお願いします。
- 戸田:
- 今日はどんなお話でしょうか。
- 有川:
- 歳をとるのも悪くないという話です。
- 戸田:
- いいですね!
- 有川:
- 人は、歳をとると嫌なことが多くなるものです。「どうして夜中に何回も目が覚めるんだ」とか、僕もそうなんですが(笑)。
- 戸田:
- (笑)。
- 有川:
- 嫌なことはキリなくあるけれど、おもしろいもので「歳をとってみないとわからない」ということもあります。
- 戸田:
- はい。
- 有川:
- 最初に気がついたのは、電車の中で本を読んで初めての駅に降りたった時です。「今、何時だろう」と駅の時計を見たんですが、ボ〜としてよく見えない。「どうしたんだろう」と思ったんですが、老眼の始まりでした(笑)。
- 戸田:
- (笑)。
- 有川:
- 「ああ、なるほど老眼というのはこういうものか」と思いました。小説などで読んで知っていたけれどピンときていなかった。老眼になって、初めてその小説の一節がわかったというか実感しました。
そう考えてみると「歳をとったからわかる、あるいは実感する」ということも多々あります。 - 戸田:
- ええ、ありますね。
- 有川:
- なにごとも知るということと実感するのは、大きな違いです。孫や飼っている犬などが愛おしい。こういった対象があるということがとてもうれしいし、いるだけでありがたい。これは歳をとったということなんでしょうね。猫や犬がきたために、その家が明るく楽しそうになった。そんなケースをいくらも知っています。歳をとったために愛おしさが若い時より、より大きく増してきたためではないでしょうか。歳をとるのも悪くないでしょう。
- 戸田:
- すごくよくわかります。私は涙もろくもなりましたし。
- 有川:
- 孫たちに絵本を読んだりすると喜んでくれる。目の前のことに気がとられる父や母より、孫がいるだけでありがたいと思っているじいさんやばあさんのほうが、子どもに接するのは向いているのかもしれません。
- 戸田:
- きっとそうだと思います。
- 有川:
- そして絵本を読んであげるだけではなく、この歳になって初めてわかる絵本のよさもあります。
- 戸田:
- ありますね。
- 有川:
- 歳とともに心がゆったりして、なによりも「おもしろい」ということをビビッドに感じとれる。そんなふうに、人はだんだんとなっていけばいいですよね。
- 戸田:
- そこを目指したいです。
- 有川:
- 子どもに「良い絵本を与えたい」というより、「うちの子の好きな絵本はどれかな」と考えてほしい。主体はあくまで良い絵本ではなく、子どもです。大人は、子どもの好きが何なのかを気にしてほしいですね。
- 戸田:
- そうですよね。
- 有川:
- 「えー、この絵本が好きなんだ」と、おかあさんや周りのおとなが、そうした思いで子どもをみていただけたらうれしいです。
- 戸田:
- ええ、確かに。
- 有川:
- 大人は「人はそれぞれだ」と言うわりに、本気で「人はそれぞれだ」と思っていない。そんな気がします。
3歳児に向いている絵本、5歳児に向いている絵本があると考えるということは「人はそれぞれだ」けれど、子どもはまだ人の域に達していない、と考えているんですかね。子どもは人に非ずということでしょうか。そうでないと「3歳児の絵本」「5歳児の絵本」がある、という考え方にならない。子どもは、いつ「人」になるのでしょう。僕は、生まれたそばから人は人だと思うのですが。
子どももみなそれぞれです。ですから「子どもの好きが何なのか」が大事になります。
保育も教育も、なにかというと平等という名の横並びになりがちです。感性まで横並びにはなりません。
絵本や読書は、あくまでも趣味の世界です。その人その人の好みを重んじるのが「あたり前田のクラッカー」ではないでしょうか。これ、分かる人はいないかな(笑)。 - 戸田:
- 若い人には通用しないかも(笑)。
ところで有川さん、今、国をあげて「認知症対策」と言われていますが、ご高齢の方に『なぞなぞ絵本』などが脳の為にとてもいいと思うんです。 - 有川:
- とてもいいと思います。そういえば先日、中学校の先生から「生徒たちが職場体験でお年寄りのホームに行くときに『なぞなぞはじまるよ』を持っていったら、お年寄りとの距離が一気に近づきました」というお便りをいただきました。
- 戸田:
- それ、すごくいいですね!
脳にとって、ワクワクするとか絵をみて考えるということ、とてもいいと思います。 - 有川:
- そうですよね。若い人たちがきて、それだけでもうれしいのに、そのうえなぞなぞをみんなで一緒にやる。いいですね。
また『なぞなぞはじまるよ』は、ただのなぞなぞではなく、「絵をよむ」なぞなぞになっています。この「絵をよむ」という楽しさをみつけると絵本も絵画も違ってみえてくるのではないでしょうか。この絵本は子どもだけでなく、われわれ年寄りにもおすすめです。
- 戸田:
- そうですよね!
そう考えると、絵本は子どものみならず大人も含めてみんなのものですね。 - 有川:
- まったくその通りです。今までの絵本の考え方は子どもに限定してきました。そのもとになっているのが
3歳児向けの絵本、5歳児向けの絵本という年齢限定主義です。子どもも大人も楽しめる、子どもだましではない絵本がいくらもあります。 - 戸田:
- そうですよね。有川さん、今日もありがとうございました。
- 有川:
- ありがとうございました。
- 戸田:
- 絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。有川さんみたいに歳を重ねていけたらいいなあって
いつも思っています。来月はどんなお話を聞かせていただけるのでしょうか。みなさんも楽しみに待っていてくださいね。
(2019.06.11 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
https://ehonkan.co.jp/ehon/351/
なぞなぞはじまるよ 2
なぞなぞの面白さと、絵本の楽しさをまた合体。待望の第二弾!