第37回「頭はフラフラ、フワフワに」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

はい、よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話でしょうか。

有川:

以前、『変なお茶会』が1歳のお子さん、それも何人ものお子さんに喜ばれているという話をしました。


佐々木マキ『変なお茶会』

戸田:

ええ、佐々木マキさんの絵本、楽しいですよね。

有川:

ところが「この絵本は、大人向けでしょう」と言われることがよくあります、と言うよりは100 人が100人そう言います。

戸田:

そうなんですか。

有川:

そんなふうに考えてしまうのが、ごくごく普通です。絵本館を始めた頃の僕もそうでした。ところがお話したように現実は異なります。なぜ、人間はすぐ思い込んでしまうのでしょう。難しい単語が使われていると「これは大人の絵本に決まっている」と考えてしまう。子どもと絵本のことでさえ、こんなありさまなんです。絵本だけでなく、あらゆるジャンルに思い込みはあふれている、と思います。
「考える」ということは「よくみること」。昔、五味太郎さんに教えてもらったことがあります。それもいろんな角度からみれば、ものごとを考える人になれる、と。もっと広く考えると、五感すべてを使って感じとること、そういった意味でしょう。
その反対はどういうことか。考えることがうまくできない人には、どんな条件があるのか。
これは以前も話しましたが、日常に「ぜったい」という言葉を使う人ではないかと。

戸田:

(笑)。

有川:

子どもは「ぜったい〇〇だからね!」とか、よく言いますね。でも、僕は自分の子どもが小さい頃から“ぜったい”禁止令を出していました。

戸田:

「“ぜったい”って言ってはだめだよー」って?

有川:

ええ。「ぜったい」といえるのは、「人間は生まれたら死ぬ」ということぐらいで、それ以外に使えるケースはほとんどない。そう考えていいと思います。でも使っていると、ついついクセになってしまう。クセになると、それが身に付いてしまいます。すると、「なぜかな」「どうしてなんだろう」ということを思わない人になってしまう。
そういった点からも、よく考えるきっかけに絵本がなれれば、と思いながら絵本を作っています。

戸田:

はい。

有川:

今、作っているのは回文絵本『どっちからよんでも』です。
絵がなく、ただ「あなだなあ」「なすおすな」を読むと確かに回文になっています。前から読んでも後ろから読んでも同じ、ただそれだけだと言えばそれだけ。ところが、これらの回文に絵がつくと含みが生まれます。頭の中が動き出す。ここに絵本の持ち味がかくされているのではないでしょうか。感じとる絵本、受け身ではなく自分の力で感じとる。それこそ絵本の力です。


本村亜美・文/高畠純・絵『どっちからよんでも -にわとりとわに-』

戸田:

ええ、たしかに。
大人の私たちがみるよりも、子どもたちはもっと想像力を豊かにして、ひとつの絵をみているかもしれませんね。

有川:

今、戸田さんが言った「みているかもしれない」という言葉、すごくいいと思います。「かもしれない」という言葉には、含みがあり疑問が残っています。そういったものの見方が考える材料になるのだと思います。

戸田:

そう考えると「想像する」って楽しいですね。

有川:

想像力、企画力というものは、頭の中をちょっとフラフラ、フワフワ状態にしているといい。そよぐ風に揺れる風船のようにフワフワ、とらわれずただよってフラフラ。心がそんな状態だとパッとひらめく。

戸田:

ああ、そうかもしれません。

有川:

そのフラフラ、フワフワ状態でいるのに格好の絵本があります。高畠純さんの『おどります』。みんなフラフラしています。フラフラ、フワフワでいるためには「ぜったい」という考えは、ものすごく邪魔になります。


高畠純『おどります』

戸田:

確かにそうですね。常に意識したいと思います。
今日もありがとうございました。

有川:

ありがとうございました。

戸田:

次回もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそよろしくお願いします。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。絵本館からの新刊をご紹介します。
先ほど、有川さんのお話にも登場されました五味太郎さん。「考えるということは、よくみること」とおっしゃったそうですが、その五味太郎さん、やっぱりよーく観察されて楽しい絵本を手がけられました。
タイトルは『とりあえずごめんなさい』。


五味太郎『とりあえずごめんなさい』

五味太郎さんからのメッセージです。

とくに失敗したわけでもないんですけど、
とくに悪気があるわけでもないんですけど、
なぜかとりあえず、ごめんなさいをしておいたほうがよさそうなこと、この世には多々あるものでして、ま、それがなかなか味わい深いのですよね、って言うような絵本です。
とりあえず、お詫びかたがた、お楽しみください。

五味太郎さんの絵もとっても楽しいです。ぜひ、親子で読んでみてください。絵本館からの新刊、五味太郎さんの『とりあえずごめんなさい』。絵本館のHPもチェックしてみてくださいね。
(2019.5.14 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載していきます。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
変なお茶会
佐々木マキ・作 世界中からおかしな人たちがおかしな乗り物で集まってきます。
どっちからよんでも -にわとりとわに-
どこか力の抜けた回文と、味わい深い絵が合体して楽しい絵本になりました!
おどります
高畠純・作 気分はすっかりメケメケフラフラ気分!ついつい踊りだしたくなる絵本。
とりあえずごめんなさい
あれれれ、なんだか変?とりあえず「ごめんなさい」!
タイトルとURLをコピーしました