第31回「人生の楽しみは、よきひととの出会い」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそよろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

ちょっと絵本から離れてしまいますが、先だってすごい経験をしたんです。北海道で地震に遭いました。

戸田:

9月6日ですか。

有川:

ええ。その時、札幌のホテルの12階に宿泊していたんです。午前3時過ぎ、ベッドからはね飛ばされるように揺れました。しばらくあっけにとられてボーッとしていたんですが、不思議なもので「余震でもなんでもこい」と変に開き直ったら、また寝てしまい気づいたら7時過ぎでした。

戸田:

お仕事で行かれていたんですか。

有川:

そうです。
電気は止まる、そのうち水道も出なくなる。なにしろ12階、エレベーターも止まっていますから非常階段で降りるしかない。今度上がる時も当然階段をのぼらなければならない。普段運動していませんから、これがこたえました。

戸田:

札幌市内で震度5でしたか。

有川:

震度5強でした。その日木曜に帰る予定だったのが、飛行機のチケットがとれなくて帰ってきたのは日曜日の夕方でした。

戸田:

そんなに長く足止めになったんですね。
そういう経験をされると、なにか気持ちが変わるということはありますか。

有川:

ありますね。つくづく思ったのは、「人の情け」ですね。食べられる場所がなくなってしまい、コンビニにも食品はほとんどない状態でした。

戸田:

そうでしょうね。

有川:

携帯の電池もきれ、困って町を歩いていたら、立ち食い飲み屋があったんです。「昼間からやっているのかな」と思って入ってみたら、おでん屋でした。朝から何も食べていなかった上に、この後いつ食べられるかわからない。そう思っておでんをおなかいっぱい、あきらかに食べ過ぎだと思えるほど食べました(笑)。

戸田:

その味は忘れられませんね。

有川:

しかし、おでんはしばらく食べたくありませんね(笑)。
その日は結局電気が来ず、暗闇の一夜を過ごしました。
翌日、またその立ち食い飲み屋を頼りに行ってみたけど、あいていません。「この店は何時くらいから始まるんでしょうか」と、近くにいた人に聞いたんです。そしたら、その人が「お腹が空いているんですか。私は近くでレストランをやっているから、うちにいらっしゃい。先ほどから電気もきました。携帯電話の充電も出来ますよ」と言ってくださったので、ついて行きました。

戸田:

それはうれしいですねえ。

有川:

すると、スパゲッティを作ってくださって、コーヒーも出してくれた。会計しようと思い、僕が「おいくらですか」と聞いたら、「いやあ、旅先で困っている人をみて、お金なんてもらえませんよ」と言うんです。

戸田:

まあ、それはなんて…。

有川:

とても気持ちのいいオーナーとMay J似の奥さん。そして、その店に集まってくる人たちも同じような方が多いのでしょうか、お菓子を分けてくださったり。なんだか気分のいい絵本を読んでいるような幸せな時間を過ごせました。

戸田:

よかったですね。

有川:

その日の夜、やっと電気がきたんですが、その時の喜びたるや。明るくなるというのは、まさに文明ですね。エレベーターが動くようになったので、夕食をしにまたお二人の店に行きました。
僕が「電気がついた喜びはとても大きいけれど、それは2番目。1番の喜びはあなたがたお二人に会えたことです」と言ったら、奥さんが泣いて喜んでくださって、二重の喜びでした。
自分で言ってはいけませんが、「よきひと よきひとにあう」と仏教の言葉であるそうです。そういう気持ちのいい人たちが、いろんなところにいるんだなと思うとうれしくなります。「そうか、こうしていろんな人と会って楽しくなるのが人生なんだ」と思いました。

戸田:

本当ですね!有川さんの今日のお話をお聞きして、「やっぱり、人生とはそういうことなんだ」と私も思いました。
今日は絵本のお話ではなかったんですが、絵本と同じようなぬくもりを感じました。

有川:

そう言っていただけると、うれしいです。最後にみなさんへのアドバイス。旅行に限らず外出の時は、携帯の充電器をもっていくこと、できれば小さなラジオやテレビもあるといいですね。

戸田:

有川さん、今日もありがとうございました。来月も楽しみにしています。

有川:

はい、こちらこそよろしく。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。ご無事で本当によかったです。
9月6日に発生した北海道胆振東部地震では、大きな被害が出ました。まだまだ不自由な生活を余儀なくされている方々も多くいらっしゃって胸が痛みます。
有川さんも大変心配されていました。また台風の被害も甚大です。改めて思うことは普通に暮らせることのありがたさを忘れてはいけないなと思います。

リスナーのノラクロさんが、うれしいメッセージをくださっています。

雅恵さん、『なぞなぞはじまるよ2』を読みました。なぞなぞもイラストもおもしろくて楽しい絵本ですね。ちなみに私は、32問中当たったのは、20問でした。なかなか手強いです。よーし、次は主人と娘になぞなぞ解いてもらいましょう。家族で楽しめる絵本、ご紹介くださってありがとうございました。

ノラクロさん、こちらこそありがとうございます。


おおなり修司・なぞなぞ文/高畠純・絵『なぞなぞはじまるよ 2』

おおなり修司さんと高畠純さんの新刊『なぞなぞはじまるよ2』、絵本館から好評発売中です。絵本館のみなさんにも、おおなりさん、高畠さんにもノラクロさんからのメッセージ、お伝えしておきますね。すごくうれしかったです。いつもありがとうございます。

(2018.10.9 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
なぞなぞはじまるよ 2
なぞなぞの面白さと、絵本の楽しさをまた合体。待望の第二弾!
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