第15回「子どもと絵本の相性」

戸田:

今日も絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いします。
有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそ、よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

夫婦でも恋人でも、相性というものがありますね。

戸田:

ええ、ありますね。

有川:

今回は、子どもと絵本にも相性があるということをお話したいと思います。
もう30年以上前に出した佐々木マキさんの『変なお茶会』という絵本があります。うちのスタッフが子どもの時に大好きだった絵本です。その話を紀伊國屋書店の方にしたら、その方が知り合いのお子さんの1歳の誕生祝いにプレゼントしたそうです。

戸田:

ええ。

有川:

そしたら1歳のお子さんが大喜びしたそうです。

戸田:

(笑)。

有川:

なにしろ文は、「ナントの公証人デュブウ夫妻」とか、「ダブリンの外科医ワイルド先生」という調子なんですよ。

戸田:

(笑)。


佐々木マキ『変なお茶会』

有川:

だから、お子さんに意味は皆目わかっていないと思うんです(笑)。

戸田:

そうですよねえ。

有川:

その子は、絵を見て何かを感じたんでしょうね。文は難しい表現ではありますが、リズムがいい。その上、よく見ると「のりもの」づくし絵本になっているんです。そういうところに心ひかれるかもしれません。

戸田:

佐々木マキさんの絵は、独特で子ども達は大好きですね。

有川:

とても人気があります。

戸田:

そういえば、村上春樹さんも佐々木マキさんがお好きですよね。

有川:

ええ、村上さんは高校生の時に「ガロ」に掲載される佐々木マキさんのマンガを一日千秋の思いで楽しみにしていたそうです。村上さんの処女作『風の歌を聴け』など初期の作品の表紙は、佐々木マキさんでした。

戸田:

ええ。

有川:

1歳のお子さんが『変なお茶会』を大好きだというのは、どうしてなのか理由はよくわかりません。「意味」ではなさそうです。繰り返しになりますが、絵がとても印象的な上に、文もとてもリズミカルです。声に出せば、すぐわかる。今、気がついたのですが、みなさん本屋さんでは声を出して読んだりできませんものね。文のリズムはとても大事です。
なによりも楽しい。よくわからないけど楽しい。
子どもたちは、わからないなりに絵本の中に参加していく。それが想像力の一番大切なところになっていくのではないかと思います。

戸田:

本当にそうですねえ。

有川:

そして、この話を聞いた絵本館の他のスタッフが、1歳の子どもがいる友だちに『変なお茶会』をプレゼントしたら、またお子さんも大喜び、まわりの大人たちがびっくりしたそうです。
しかし『変なお茶会』は、万人向けの特効薬みたいな絵本ではありません。くれぐれも、子どもと絵本も相性です。

戸田:

(笑)。

有川:

書店には「あかちゃん絵本」コーナーがよくありますが、この『変なお茶会』は、どうみても「あかちゃん絵本」には入れてもらえない(笑)。

戸田:

そうですよね(笑)。

有川:

みなさん、ぜひ『変なお茶会』を手にとってみてください。「この絵本を1歳の子が喜ぶとは?」と思うでしょう。つまり子どもたちは、役に立つか役に立たないかでは有りません。何か心にひっかかるものがあるかないかです。
作家の方から言えば、わざとわからない部分を入れながら、結果的には子どもが楽しくなる絵本を作る。これはなかなか難しいところではあります。

戸田:

赤ちゃんに聞いてみたいけれど、聞けないですねえ。でも、すごく興味がわきますね。

有川:

ええ。そこで次回は「何の役にも立ちそうにないけれど、何か心にひっかかるものがある絵本」についてお話します。出来れば広島弁をまじえてしたいと思います(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

実は、全国の土地の言葉で絵本を紹介するポスターを地域別に作ったんです。

戸田:

わあ、すごい!

有川:

北海道から沖縄までです。だから広島弁バージョンは、おおなり修司さんに読んでもらい、女性版は戸田さんに読んでいただくという企画を今度やってみたいなと思っています。

戸田:

いいですねえ。私もちょっと練習をしておきます。

有川:

よろしくお願いします(笑)。

戸田:

有川さん、いつも楽しいお話をありがとうございます。次回もよろしくお願いいたします。

有川:

はい、よろしくお願いします。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんにお話をお伺いしました。
(2017.6.13 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
変なお茶会
佐々木マキ・作世界中からおかしな人たちがおかしな乗り物で集まってきます。
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