推理することで客観性が育つ

最近、読んだ本で興味深かったことを教えてください。

むかし、母と観た映画で暗い炭坑街の話があった。
北林谷栄さんが主演していたような気がする。
画面がモノクロで暗いだけでなくお父さんが保証人になって財産も何もかもなくしてしまうという暗い話。
そのときに「保証人ってなあに」と母に聞いて、大体のことを教えてもらったとき「保証人というのは、つくづくいけないものだ」とおもった記憶がある。
おとなになって保証人という制度を理解するほどに、ひどい制度を人は作ったものだと思うね。
保証人がいなかったら、ものごとが進まない、そんなことをどうして考えだしたのだろう。
なんの頼りもなしに地方から東京に出てきた人に、保証人を立てろということ自体無茶だよ。
親兄弟が東京にいる人だっていやなのに。
とんでもないこと考えついたと思う。
戦時中の隣組、江戸時代の五人組と変わらない発想。
自分の人を見る目がないことを棚にあげ、責任を他人に押し付けようというひどい制度だ。
ある意味では法律違反、禁じなくてはいけないとおもう。
日本ではためににならない慣習がたくさんある。
なかでも、いちばんよくない制度というのがサービス残業、不当労働行為です。
ただ働きさせるというのは犯罪ですよ。

最近読んで感銘した本は内橋克人「なんのための改革か」(岩波書店)という対談集です。
内橋さんの本はどれも、よくのみこめる論旨ですきなのでほとんどの本を読んでいます。
この対談集は内橋さんがつね日ごろ気になっている人たちとの対談ですから、どの人のものも興味深く読みました。
ことにオランダの「パートタイム革命」について以前から気になっていたので長坂寿久さんとの対談は興味深く読みました。
オランダは1984年には失業率が13%位だったのが、現在3%を切っている。
それは二つのことに取組んだ結果だそうです。
不当労働行為を徹底的になくしたこととパートタイムの人たちの給与体系を社員と同じレベルの時間給にしてパートタイマーの労賃を下げないようにした。
この二つを法律で厳しく取り締まったら失業率が下がり、犯罪も自殺も少なくなったそうです。
犯罪と自殺は失業率にシンクロしているとのこと。
倒産する会社が増え、失業者が増えると、犯罪も増える。そのうえ自殺者も増える。
そんな世のなか、とんでもない社会です。
ほんとに。

こういった経済関係の本を好んで読むのは、今の社会がどうして混迷しているのか、なんでのんびり暮らせないのだろう、多くの人がなぜあくせく暮らしているんだろう。
原因はどのようなところにあるのだろうと、解きほぐしてみたくなるからです。
この対談集で「目からウロコ」だったのは、小野善康さんでした。小野さんの「誤解だらけの構造改革」(日本経済新聞)をすぐ買ってきて読みました。
すぐれた推理小説を読んでいるような気持ちになりました。
経済の本を読んで現代の社会現象を分析したり推理するのはおもしろいことです。
推理するということは、ものごとを客観的に見て、そして判断する。そういった意味での初等教育だと思う。
客観的にみることと、主観的にみることの峻別ができていないと、客観と主観がごっちゃになって話し合いができずに感情論になってしまう。
本を読んで客観的にものを見る目を育てることはたのしいことです。

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