第90回「がんばれ がんばれ」は禁句

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそよろしくお願いします。

戸田:

先日NHKで放送された五味太郎さんのテレビに有川さんも登場されて私も見せていただきました。リスナーの方も見てくださったようで、鹿島のとんぼさんという方がメッセージを下さいました。
「首都圏情報ネタドリ、忘れず見ましたよ。五味さんの絵本は読んでも楽しく、そして考えさせられる内容のものが多いですね。歳を取ると物語の内容をゆっくり考えながら読むのが、むしろ絵本のほうがよいのかもしれません。それにしても有川さん、思っていたイメージとピッタリの方でした」と下さっています。

有川:

そうでしたか。どう思っていらしたのか興味津々だけど(笑)。

戸田:

絵本が大好きで素敵な有川さん、というイメージだったと思います(笑)。

有川:

そう言ってくださるとうれしいです(笑)。

戸田:

絵本も楽しんでいらっしゃって。

有川:

絵本に限らず、いろんなことを楽しんでいられたらいいですよね。

戸田:

そんな気持ちでいると周りも楽しくなりますね。
五味太郎さんのテレビの反響はいかがでしたか。

有川:

いろんな方が見てくださって「有川さんが出てきてビックリした」と言う人が何人もいました。
五味太郎さんは、今までいなかったタイプの絵本作家だと思います。子どもを導こう、教えようとか、そういうことにほとんど興味がない。「日本には1億人以上の人がいるんだから、自分がおもしろいと思ったことは、子どもも含めて何人かの人がおもしろいと思ってくれるはず」と考えているんですね。それまでの絵本作家とは発想の方向がまったく逆なんです。発想というか、立つ位置が違いますから、おもしろい絵本を次々生みだすことができたのでしょう。

戸田:

そうなんですね。

有川:

大人には悪いクセがあります。自分のコンプレックスが気になって勉学だけでなく、習い事やスポーツなどを子どもに早くから学ばせ、頑張らせなきゃと、そんな気持ちが今の社会、満ちているのではないでしょうか。昔とくらべると大人が日常生活に追われなくなって、ヒマな時間が生まれたせいでしょう。昔の人は掃除、洗濯などに追われ日常が忙しく、子どもにかまっていられなかったでしょう。

戸田:

そうかもしれませんね。

有川:

子どもたちは勝手気ままで自由な時間がなければ、だんだん息苦しくなってしまうのではないでしょうか、そんな気がします。
さっきも言ったように何か自分に合った楽しいことを見つけ、そのうえエンジョイできれば一番ですよね。

戸田:

本当にそうです。

有川:

エンジョイといえば、以前、スペインのサッカーリーグでコーチをされている佐伯夕利子さんにお話を伺った時、スペインに限らないそうですがヨーロッパの人たちは、サッカーの練習をした子どもを迎えに来たときに「がんばった?」ではなく、「エンジョイした?」と聞くそうです。

戸田:

いいですねえ。

有川:

佐伯さんは、「そういう環境で育った選手たちは、緊張する局面を迎えたときに本当に強いんです」と言っていました。
子どもに対して「がんばれ、がんばれ」は禁句です。佐伯さんいわく「試合でがんばっていない子は一人もいません」とのこと。そうですよね。

戸田:

なるほど、そうですね。

有川:

「がんばれ、がんばれ」でやってきた人たちは、すごい緊張がおそってくると、それに負けてしまうケースが多いそうです。

戸田:

それ、わかる気がします。

有川:

小さな頃から、エンジョイすることがクセになるかならないか、とても大事なことではないでしょうか。
五味さんは、それを具体的に僕の目の前で示してくれました。とてもありがたい人です。でも、とんでもないことを言う人でもあります。「ブスは社会悪だよなあ」と言うんですよ。それはひど過ぎるでしょと思っていたら「ブスというのは、女とか男とか関係なくブスっとしている人のことだよ。そんなブスっとしている人が近くにいたら、みんな嫌だろう。そういう意味で社会悪だよな」と。

戸田:

そういうことなんですね(笑)。

有川:

先日、養老孟司さんの対談を読んでいたら「養老先生はいつもほんわかニコニコされていて、近くにいるだけで私たちの心がなごみます」と対談相手の方が言っていました。まさしく「ブス」の対極、そういった人が周りにいるのはとても大事だし、ありがたい。

戸田:

ええ、そうですね。

有川:

そして「なにしろ阪神だ、広島だ」と喜んだり嘆いたりしている人たちもスゴイです。とにかく楽しみながら過ごすから生活の充実度は高いような気がします(笑)。

戸田:

そこに有川さんも入っていますね(笑)。

有川:

そうです(笑)。

戸田:

とにかく楽しむことですね。

有川:

子どもだけでなく大人もとにかく楽しむ、それがとても大事です。

戸田:

では、次回も楽しいお話を聞かせてください。

有川:

はい。

戸田:

今日もありがとうございました。

有川:

ありがとうございました。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんでした。

さて、絵本館から楽しい新刊のご紹介です。
おおなり修司さん・文、飯野和好さん・絵『シカものがたり』。以前有川さんからも、めちゃくちゃおもしろいとお話を伺っていて、私もものすごく気になっていた、福山出身のおおなり修司さんの新刊がとうとう出版されました。


おおなり修司・文/飯野和好・絵『シカものがたり』

絵本史上初、詩吟風絵本の登場です!
ある森に住む、それはそれは立派なツノを持つ誇り高いシカのものがたり。
詩吟なんて聴いたこともないあなたも、ましてや吟じた
ことのないあなたも、好きなように節を付けて読めば、
あら不思議。
たのしか〜!って詩吟風絵本の世界が拡がります。
『DJ YOYO』に続く、おおなり修司&飯野和好コンビによるノリノリ絵本の第二弾!

おおなり修司さんからのメッセージです。

何年か前、浪曲風痛快チャンバラ絵本『ねぎぼうずのあさたろう』の読み語りライブを初めて観た時、カンカラ三線を弾きながら股旅姿で読み語る飯野さんの姿が、とにかくカッコ良かったんです!
その時、僕は思いました。
「浪曲風の他に何か考えられないかな?」「そうだ!詩吟で行こう!」そんなこんなで考えはじめて数年が経ち、
ついに詩吟風絵本『シカものがたり』が完成しました。
絵も飯野さんに描いて頂き、感無量です!
詩吟っていうと何となく難しそうですが、あくまで詩吟風絵本ですので、自由に節を付けて読んでもらえば、うれしか〜!!です。

(2023.11.14 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。


エフエムふくやま 戸田雅恵さん

9/15 NHK「首都圏情報 ネタドリ!」に五味太郎さん
NHK「首都圏情報 ネタドリ!」で、五味太郎さんのインタビューが放送されます!9月15日(土)19:30
シカものがたり
おおなり修司・文/飯野和好・絵詩吟風絵本の登場です!
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