第82回「意外や、意外」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそよろしくお願いします。

戸田:

(笑)。今日はどんなお話ですか。

有川:

世の中には常識だと思っていることが「意外や、意外」ということが、よくあると思うんです。

戸田:

はい。

有川:

山口県のデイサービスで「バリアだらけ」という所を見たことがあるんです。
高齢者が集まっているから、バリアフリーと考えがちですが、反対にそこはバリアだらけなんです。

戸田:

え、そうなんですか。

有川:

バリアだらけだと、みなさん気をつけなければいけない。

戸田:

なるほど。

有川:

すると注意力が発揮されるんですね。

戸田:

そうですね。

有川:

また、その施設だけで使えるコインがあって麻雀などの賭け事をしたり、ゲームなどを楽しめるそうです。だから「毎日来るのが楽しくなる」と言っている高齢者が多いそうです。みなさんの張りのある顔が印象的でした。

戸田:

それはいいですね。

有川:

常識だと思っていたことが違っていたということで言えば、昔ぼくらが中学生だった頃、英語を習うと「This is a pen」なんてやりました。

戸田:

ええ。

有川:

でも、英語圏の子どもが最初に「This is a pen」と文字を読んで発音を練習するなんてあり得ないでしょう。
まず「みて」「きいて」、両方の関連を確認しあって、だんだん頭の中が英語的になって話せるようになる。そういう手順だと思うんです。
最初に「This is a pen」という読み書きをして、あとから聞く話すではないでしょう。順番が逆なんです。だから日本人は6年間あるいは10年も英語を学ぶのに、話せる人が圧倒的に少ない。

戸田:

そうですよね。

有川:

ぼく自身も英語はまったく話せません。このように手順を間違ってしまうと、物事は一向に、はかがいかないものですね。人々が英語を話すようにならないのに文科省はまったく改めない。
また、日本の狭い住宅なのに、なぜあんなに塀を立てたがるのでしょうか。風通しは悪くなるし、泥棒は隠れやすい(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

そして、都市部の狭い住宅ではリビングは2階のほうがいいと思うんです。昔は、水まわりは1階に作るしかなかった。しかし今は、台所もお風呂もトイレも2階に作れるようになりました。リビングは陽当たりも風通しもいい2階がいいと思う。だけど、なぜか陽当たりの悪い1階が多い。昔の常識が今も刷りこまれていて何も変わらない。考えると不思議です。
普段から少しは常識を疑ってみる必要がありますね。

戸田:

そうですね。

有川:

ところが、疑ってばかりいると生活が窮屈になってくるので、伸びやかな気持ちになるのも大切です(笑)。
だから、絵をみるだけでうっとりする。そういった絵本も、いいと思うんです。しかけ絵本をみてびっくりしたり感心したり、もいいですよね。

戸田:

ええ。

有川:

楓(かえで)真知子さん作『ねこねむる』という絵本を出しました。最初は「おおかみ おきる」。おおかみが伸びをして、きれいな陽射しが画面いっぱいにひろがる。それは素晴らしい絵なんです。


楓真知子『ねこねむる』

有川:

「まんどりる まざる」。まんどりるが、さると一緒に温泉に入っているんです(笑)。「あるまじろ あからむ」。

戸田:

(笑)。

有川:

最後は「ねこ ねころぶ」「ねこ ねむる」。

戸田:

ちょっと言葉あそびもありながら、絵を楽しむという絵本ですね。

有川:

そうですね。動物の名前が頭にあって、そのあとに動詞がくる。「おきる、うたう、たすける、ならぶ、まざる、とぶ」とか。
文と絵の間にちょっとだけ距離がある。それも楽しめますし、楓さんの絵をみているだけで「いいなあ」と心持ちがよくなる。疑うことなくうっとりするという楽しみかたもある。素敵な絵本が出来ました。

戸田:

いいですねえ。

有川:

まんどりるがどんなふうにまざっているか、みなさん、ぜひご覧ください。

戸田:

すごく気になります(笑)。有川さん、あらためてその絵本の作者の方を教えていただけますか。

有川:

楓真知子さん。絵本館の絵本は2冊目になります。
絵がとても素敵なんです。ぜひ、みなさんにゆっくりみていただければと思います。

戸田:

有川さん、今日もありがとうございました。

有川:

ありがとうございました。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんでした。

有川さんがご紹介くださいました、絵本館からの新刊
楓真知子さんの『ねこねむる』。

いきいきとした生きものたち。

おおかみ おきる
うま うたう
たぬき たすける
なまけもの ならぶ

生きものの名前で韻を踏んだシンプルな文章と
ダイナミックなタッチで描かれた色鮮やかな絵
カエデマワールド第二弾です!

楓真知子さんは、大阪生まれ。
素直な心で描くことを心がけていらっしゃるそうです。
2020年『たびにでた』で絵本作家デビューされました。
第二弾の『ねこねむる』も、とっても楽しい絵本です。
絵本館HPでもご紹介がありますから、ぜひみてみてくださいね。

(2023.02.14 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。
ねこねむる
楓真知子・作 いきいきとした生きものたち、カエデマワールド 第二弾です!
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