第71回「遊びをせんとや生まれけむ」

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそよろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話ですか。

有川:

昔に比べると、今の子どもたちは早くから「塾だ、塾だ」と勉強をさせられているでしょう。

戸田:

そうですね。

有川:

我々が子どもの頃は、暗くなるまでただただ遊んでいたものです。勉強なんてほとんどしませんでした(笑)。

戸田:

(笑)。

有川:

平安時代の『梁塵秘抄』という歌謡集に「遊びをせんとや生まれけむ」とあるそうです。なんだか今は「勉強せんとや生まれけむ」になってしまって、子どもたちが気の毒な気がします。

戸田:

ええ。

有川:

20世紀始め、オランダにヨハン・ホイジンガという人がいました。『中世の秋』という著書などで有名な歴史学者です。その人が「遊びをせんとや生まれけむ」と同じようなことを言っているんです。「文化のなかに遊びがあるのではなく、遊びが文化を生み出すんだ」と。

戸田:

なるほど。

有川:

その遊びの気持ちが本にも通じるものがあります。
五味太郎さんが言うには「いつ、どこで、どんな本と出会うかというスリリングさが本のいのち。だから選定図書、指定図書、課題図書というような辛気くさいことをやっていたら、最も大事なスリリングさを失ってしまう。」
本を選ぶのも文化と一緒で遊びの中にあると考えると方向性がはっきりしてきますね。

戸田:

ええ(笑)。

有川:

元陸上選手の為末大さんが、夢中になってやることの大前提は「自発的に自分でやる」ことだと言っています。

戸田:

そうですよね。

有川:

「どんな本と出会うか」というスリリングさも、自発性があればこそです。だから子どもが本を選ぶ時に大人はあまり構ってはいけません。構うと自発性を失います。構っていいときは、子どもに相談された時だけだと思います。

戸田:

ええ。

有川:

これからの子どもたちにとって、大きな問題になるのが10年、20年、30年後の社会です。昔と違って今は、社会の変動性が高くなっている。ですからどちらにしても子どもたちは、成長する過程で大小さまざまな選択と向かい合わなければなりません。そこで何が必要かというと、偏差値や学歴などよりも、たよりになるのが柔軟な考えの頭ではないでしょうか。
自分から自発的に動くことによって、少しずつ頭の柔軟性を獲得していくのではないでしょうか。そうした繰り返しのなかでその人にとっての明るい未来が見えてくると思います。読書もまず自分で本を選ぶという自発性が、とても大事です。

戸田:

本当にそうですね。

有川:

「遊び」ということでいえば、『妖怪横丁大運動会』という新刊が出来上がりました。この運動会がハチャメチャでおもしろいんです。妖怪が運動会をするんですから、だいたいどこか可笑しいに決まっているわけです(笑)。

戸田:

(笑)。


広瀬克也『妖怪横丁大運動会』

有川:

先ほどの「遊びが大事」も、「おもしろい」と思う気持ちが基本、スタートですからね。

戸田:

ええ。そして今は、いろんなものが揃ってしまっているので、その中から何を選ぶかというと、やっぱり子ども主体でないといけないですよね。

有川:

そうです。大人は横でゆっくり見てあげればいいんですよ。

戸田:

確かに。

有川:

なにしろ「遊びをせんとや生まれけむ」ですからね。僕なんて生まれたそばから、ずっと焼酎を友として楽しく遊び続けて今に至っています(笑)。

戸田:

(笑)。なによりも周りの大人が楽しそうにやっているのがいいんですよね。

有川:

まったくそうです。そんな大人をみていたら、子どもたちも「早く大人になりたいな」という気持ちになるんじゃないかな。

戸田:

本当ですね。

有川:

絵本も「子どもを導く、子どものためになる」が目的ではなく、夢中になれるもの、その一つと考えて下さい。そんな軽い気持ちで絵本は読んであげるのがいいですね。楽しく遊び続けた結果、あれが「役立った、ためになった」と気がつくようなものです。順番は逆です。

戸田:

そうですね。またそんな絵本が出来るのを期待しております!

有川:

期待していてください(笑)。

戸田:

有川さん、今日もありがとうございました。

有川:

こちらこそ、ありがとうございました。

戸田:

絵本館代表の有川裕俊さんでした。

有川さんのお話にもありました広瀬克也さんの『妖怪横丁大運動会』、絵本館からの新刊をご紹介します。

シリーズ累計20万部。
こんな運動会、みたことない!
朝から花火がパパーンとあがり、今日は妖怪大運動会!
え〜っ!と驚く競技がいっぱいです。
とんでもない障害物競走、風神雷神の応援合戦も見応えたっぷり。
さあ、最後は妖怪たちのリレー!
赤組がんばれ!白組がんばれ!
ページをめくる手にも力が入りますよー。

広瀬克也さんからのメッセージです。

今日は横丁の大運動会です。
お天気にもめぐまれて、みんなはりきっています。
赤組、白組、ちからいっぱいの運動会。
さあ、どっちが勝つか…。
ちからいっぱい読んでくださいね。
よーい、どん!

(2022.03.08 放送)
2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
番組の内容を定期的に掲載しています。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。
妖怪横丁大運動会
広瀬克也・作こんな大運動会、みたことないっ!
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