第1回「絵本を否定はしていません」

2016年4月からエフエムふくやま「ブック・アンソロジー」に月1回、第2火曜日に出演しております。
インタビュアーは、パーソナリティの戸田雅恵さん。
これから番組の内容を定期的に掲載していきます。なお、ラジオインタビューですので、その時はじめて聴く人もいます。同じような話が2度3度出てくることがあります。ご了承ください。


エフエムふくやま 戸田雅恵さん

絵本を否定はしていません

戸田:

有川さん、今日もよろしくお願いいたします。

有川:

こちらこそ。よろしくお願いします。

戸田:

今日はどんなお話をお伺いできるか、楽しみにしていました。

有川:

我々にはテレビのない時代を生きていた経験があります。それこそラジオですね。

戸田:

はい。

有川:

ラジオから聴こえてくる音だけで想像します。
「荒海や 佐渡に横たふ 天の川」と芭蕉先生がいうと、みんなそれぞれの「荒海」や「佐渡」、「天の川」がみえるんだと思うんです。

戸田:

はい。

有川:

ところが、それに克明な細密な絵が描いてある。

戸田:

ええ。

有川:

そうすると、せっかくの楽しみをとられちゃったみたいなね。そこは、読んでいる我々が想像するのがいいところなのに「なんで絵を付けてくれたんだ〜」というのがあるのではないでしょうか。

戸田:

(笑)。でも、それって「絵本」を否定していませんか。

有川:

そういうことですよね。

戸田:

(笑)。

有川:

ちょっとだけ、そういう感じがしますよね。つまり、「子どもは思い描く力がよわいから、大人の私たちがこういう絵を提示して、わかりやすくしてあげるからそんなに嫌わないでお話に入ってきてね」という考え方じゃないでしょうか。

戸田:

なるほど。

有川:

ところが、これをやると子どもが想像しなくなってしまうのではないかと思うんです。では、どうしたら子どもたちは絵本から想像する力を得ることができるのでしょうか。
もう10年くらい前になるでしょうか、亡くなられた絵本作家の長新太さんに、僕が「長さん、絵本の一番肝心要なところは省略でしょうね」と言ったら、笑いながら「うん、そうそう。省略と飛躍ね」と、長さんが言ったんです。
この省略と飛躍がバランスよく出てくる絵本というのが難しいんです。
文章にも絵にもリズムがあって、というようなことができる作家というと、これがまたものすごく少ないんです。
こういうふうに考えてみると、意外と文章が少ない絵本が想像力をうみだす大元になっているような気がします。
文章の長い絵本がすべてダメですよ、と言っているわけではないんです。
さきほどの俳句のことを考えてみるといいんです。短い文章で想像をふくらましていくということを、我々民族はもう何百年もやってきているわけですから。それを絵本でもやることは、ごく自然です。
短い文章に絵がつく。そういう作家がいたんです。
与謝蕪村。蕪村という人は、彼が描いた絵が国宝になっている。「十便十宜図」は国宝になっているくらいです。
俳句も芭蕉に並んで評されているんです。その蕪村さんの俳句に、こういうふざけたのがあります。
「学問は 尻からぬける ほたる哉」
そして、それを蕪村さんは絵に描いている。文机によりかかってボーッとしている男の人が描かれている。しかし、尻からぬけたほたるは描いてない。わざと描いていないところがミソです。こういう省略の伝統が江戸の昔から日本にはあるということなんですね。

戸田:

いま有川さんのお話を、私もすごく納得できて、だからやっぱり名作とよばれる絵本には共通するものがあるし、長新太さんの作品も素晴らしいですしね。それが、ちゃんと子どもたちは大好きなんですよね。

有川:

ええ、子どもたちは長さんの絵本が大好きです。

戸田:

そうですよね。
有川さん、まだまだ興味深いお話をいっぱい聞かせていただけそうなので、次回、長さんの魅力について改めて聞かせてくださいますか。

有川:

はい。そうさせてください。
(2016.4.12 放送)
https://fm777.co.jp/
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