ぼくは、絵本より先に長さんとは、マンガで出会った。
小学生のとき友達の家で見た雑誌に、直線を多用して、人物の手足がマッチ棒のようなスタイルのマンガが載っていて、長 新太という名はそのとき憶えました。
1960年代の中頃だったか、長さんのマンガはマッチ棒から一転して、フニャリとしたジェイムス・サーバー風になった。
当時の「美術手帖」で「長 新太がスタイルをがらりと変えたのは、非常に勇気のあることだ」という誰か(たぶん草森紳一)のコラムを読んだ。
いったん世間に認められたマンガ家が、その画風を一新するのは、とても大変なことだったに違いない。
ぼくは、長 新太の絵は72年版の『おしゃべりなたまごやき』が最高だと思う。
イメージと技術の幸福な一致。
エスプリの効いた絵とは、まさにこれをいうのでしょう。
それからグワッシュやパステルの絵もいいけど、ぼくは、ロットリング(たぶん)の線画にカラーインクで彩色した絵、たとえば『コルプスせんせい』とか『めのまどあけろ』なんか、真似したくなる(そして実際にマネしたこともある)くらいすきです。
佐々木マキさんが選ぶ 長新太さんの絵本3冊
- 1.『おしゃべりなたまごやき』(寺村輝夫・文)福音館書店♦1972年
- 絵がすばらしい。
- 2.『はるですよ ふくろうおばさん』講談社♦1977年(1996年改訂版)
- おはなしも絵もとてもいい。
- 3.『キャベツくん』文研出版♦1990年
- ブタヤマさんならずともブキャッとおどろいてしまいました。