クイクイちゃん

何度も手にとりたくなるハイカラなユーモア絵本!

クイクイちゃんは、毛糸と布でできているお人形。
おなかをおすと「クイクイ」と音がなります。

海辺で会ったタコといっしょにデパートに出かけたクイクイちゃん。
買い物をしているタコをまっていると、とつぜん誰かにつかまれてしまいます。
さあ、たいへん。
クイクイちゃんはどうなるでしょう。

どこかなつかしい。とても愛らしい。
おっとりとしてとぼけた、そしてハイカラでユーモラスな絵本です。

牧野夏子さんからのメッセージ

あるとき、いつものように、とりとめもないことを考えていて、なぜかふと「蛸が、全部の足に靴下をはいたら、カラフルで楽しいだろうなあ」「あ、でも、靴下は二本で一足だから、実際にはくのは四足か」「蛸が自転車に乗ったらおもしろいなあ」「そのときは、8本の足をどうやって使うのかしら」と、蛸にとりつかれてしまいました。
それで、自転車に乗った蛸が、デパートに行って靴下を買うお話を書いてみました。
蛸と出会って買い物に付き合うのは、語り手の「ぼく」でした。
本当は蛸に負けない個性的な主人公がほしかったのですが、思いつかなかったのです。で、書いたものの、お話はもう一つ何か足りない感じで、そのままほうっておかれました。
何年かたって、クイクイちゃんというお人形を主人公に、お話をつくることになりました。
いろいろ考えて、いくつか書いてみたのですが、どうもなかなか、クイクイちゃんにふさわしい、ゆかいなお話ができませんでした。困った私は、一生けんめいクイクイちゃんのつもりになって、一体どんなことが起こるだろうと想像してみました。
すると、突然「ちりん、ちりん」とベルを鳴らして、自転車に乗った蛸がやってきたのです。
「この光景は、見おぼえがある……!」あの話の主人公は、クイクイちゃんだったのか!
主人公を探していたお話と、お話を探していた主人公が、やっと出会って、こんな絵本になりました。

佐々木マキさんからのメッセージ

人形とタコと百貨店。まるで三題噺ですが、そのうえタコが自転車に乗る、靴下をはく。なんだこれは。
自分で話を考えるときは、まず人形とタコは思いついても、自転車とか百貨店とか靴下は、やめておく。絵を描くときの難渋が前もって判るから、尻込みしてしまう。
むかし『おばけリンゴ』の作者ヤノーシュへのインタビューを何かで読んだが、お話を思いついても、この部分は絵に描くのは厄介だなと思ったら、絵にしやすいように話を変えてしまう、と語っていた。やはり、そうか。
しかし私はお話を変えるわけにはいかない。自分の考えた話ではないからだ。果敢にトライするほかない。
その結果、タコが自転車に乗っているところも、布の人形の表情も、ハイカラ懐かしの百貨店も、なんとかうまくいって、まあ易きに就かずによかったのでは、と満足しています。


絵本館スタッフ手作りのクイクイちゃん!

牧野夏子・文
佐々木マキ・絵
初版 2012年6月
32頁 257×189mm
ISBN978-4-87110-075-5
定価 1,200円+税

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牧野夏子
1977年生まれ
佐々木マキ
1946年 神戸市生まれ
マンガ家・イラストレーター・絵本作家