子どもに絵本を読んで感動したことはありますか?
「子どもに読んで感動した絵本」はないですね。
 感動は大袈裟ですが、ぼくが読んで気に入った絵本を子どもに読んでいたので“子どもに読んで感動した絵本は”ないわけです。
絵本館スタートのとき、いろいろな絵本をたくさん読みました。
 そのとき読んで「いいな!」と思ったのは長新太さんの『ぼくのくれよん』。
 この絵本を読んで、はじめて「へー、絵本ておもしろいな」と思った。
 まず最初のページに「これは くれよんです」とあるんですよ。
 そのくれよんで、ぞうがダイナミックに池を描く。
 かえるがとびこむと、池ではなくて、びっくり!あー、こういう展開があるのかとおもしろかったね。
 長さんと、その話をしたとき、「青いくれよんで池を描くと、ふつう絵本ではすぐに池になってしまうんだけど、それじゃ、おもしろくないと思って、飛び込めなくしたんだ」って話してくれました。
 『ぼくのくれよん』は長さんの名作だね。
 いま講談社から出ているけど、その当時は銀河社から出ていた。
 ところが、その前もあって、名古屋の出版社から出た絵本が最初のバージョンだった。
 その最初の「ぼくのくれよん」には最後のページ、ぞうが走り去っていくところがなかった。
 この本のなかには あらゆる絵本的な要素が詰まっているような気がする。




