新刊『ゆっくりのんびり』についていとうひろしさんにおたずねしました。
- いとうさんはこどもの頃、ゆっくりのんびりしていましたか?
おとなになった今は、どうですか? - 私はせっかちです。
こどもの頃も「どーしてそんなに落ちつきがないんだ」と、言われていました。じっとしていたり何かを待っているのは、とても苦手でした。
今もあまり変化はありませんが、気持ちに頭や体がついていけなくなっているので、多少はのんびりしてきたかもしれません。
例えば話す時、言葉はでてこないし、舌は回らないしで、いつも「アワワワ…」となってしまいます。それではかっこ悪いので、意図的にゆっくり話そうとします。それでも、やっぱり「アワワワ…」なんですけどね。 - 1日中のんびりできるとしたら、何をして過ごしますか。
- なんにもしないで1日ぼんやりすごし、地球の自転を感じてみたいです。
日の出や日の入りを見ると、「あー地球ってほんとうに回ってるんだ」と思えますが、これって、目で見て頭で理解しているんですよね。そーじゃなくて、絵本の主人公のはなちゃんみたいに、なにもせずに、ぼんやりと過ごすことで地球が回ってることを実感できたらいいなと思うのです。
ちなみに、数年前、内耳の病気をしてから、たまに軽いめまいを感じることがあります。地球が動いているって感じです。でも、これはぜんぜんおもしろくありません。 - 最近の「これはおもしろかったなぁ」という出来ごとを教えてください。
- 今年の冬、北海道で犬ぞりをやった時のできごとです。
私の前を行くカミサンのそりが止まってしまい、いくら声をかけても、ちっとも走りません。止まったのは山奥の雪深い林道、あたりにはまったく人家はなく、最後尾を走っていた私たちふたりは雪の中にとりのこされるかたちとなりました。
ですから、その時はとても心細い思いをしたわけですが、あとから思い出すと笑ってしまうんです。というのも、カミサンの必死のかけ声にめんどくさそうにふり返った犬たちの顔。
「おいおい、なんだよ、あのおばさん」
「なにさわいでんだよ」
「わけわかんねーな」
「いいから、ほっとこうぜ」
って感じの顔なんです。犬が人をなめきるとああいう顔になるんだって、初めて知りました。
今でもその顔を思い出すと笑えます。
ゆっくりのんびり
いとうひろし・作 ゆっくりのんびり読んでほしい。「ゆっくりのんびり」絵本。