ITO HIROSHI
1957年 東京都生まれ
早稲田大学卒業。
個性的な画風と哲学的な作品作りが高く評価されている。
絵本にっぽん賞、日本児童文芸家協会新人賞、路傍の石幼少年文学賞受賞。
イラスト・いとうひろし
手の中に残ったのは、ギザギザの足が一本。
こんな経験、原っぱでバッタを追いかけたことのある人なら、一度や二度あるはずです。
でも、このバッタの足、どこか絵本に似ていると思いませんか。
バッタの足は、バッタから離れてしまえばただの物です。
しかも語っていることは、しごく単純。
これはトノサマバッタの足。
これはオンブバッタの足。
ところが、それから先は、人それぞれ。ある人は自然の神秘にひたるでしょう。
ある人は片足となったバッタの行く末を案じるでしょう。
生きもののしたたかさを感じる人もいるでしょう。
絵本も同じです。自分の心をひらくきっかけにすぎません。
絵本にかいてあることなんてどうでもいいんです。
その先が絵本の楽しみ、おもしろさだと思います。